初心者の方はこちらからどうぞ→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」
今回からは「旅」に出た後、アクト2のビートを考えていきます。
アクト2は長いので半分で区切り、その折り返し地点を「ミッドポイント」Midpointと呼びます。
(※ミッドポイントで切ると実質は四幕になるので起承転結などと比較しやすくなります)
「旅」は主人公を変化させるためにあるものでした。
ここでは「○○しなくてはいけない」というミッションが与えられるのでした。
それこそがアクト2のビート「バトル」です。
「試練」「トライアル」「ミッション」などイメージしやすい呼び方で良いと思います。
『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』(以降、『CAT』)では、アクト2からミッドポイントまでの過程を「お楽しみ」Fun&Gamesと長いシークエンスで捉えてしまっているため、具体的に何をさせていけばいいのかが分けられていません。
『千の顔をもつ英雄』では「試練の道」とあります。
主人公は何らかの「バトル」に挑戦し、成功か失敗の結果が出ます。
それによって次の「バトル」が組まれ、また結果が出る。そのくり返しになります。
トーナメント戦で一回戦、二回戦と勝ち上がっていくようなイメージのため「バトル」といいます。
桃太郎で言えば「犬」「サル」「キジ」を仲間にしていくというのが「バトル」に相当します。
これは大きな戦いに備えた準備、仲間集めをするという目的です。
同じような構造を持っているのが『七人の侍』『インセプション』『オーシャンズ11』などで映画の半分ぐらいまでが準備に使われています。
これらは「ミッションプロット」といって同じタイプなので、同じようなタイミングで同じようなイベントが起こります。
ストーリーを分類するプロットタイプについてはいずれ解説します。
また「バトル」はいくつあっても構いません。解釈次第とも言えます。
例えば「ロッキー」では、MPでの「エイドリアンとキスをする」ため「バトル」をクリアしていきます。
これを「エイドリアンと恋人になる」という大きくとらえてしまえば、『CAT』の「お楽しみ」というようにざっくりになります。
しかしデートに誘う過程を細かく見ていくと小さい「バトル」がたくさんあります。
「内気なエイドリアンとのデートにこぎつける」→「スケート場へ入る」→「部屋に誘う」→「ソファに誘う」と細かいエイドリアンとの駆け引きに勝利して「エイドリアンとのキス」へと到達しています。
そのどこでも、エイドリアンは渋ったりするため葛藤や交渉があります。
主人公の戦い=「バトル」があるわけです。
この葛藤や戦いがない場合は、ただの出来事の羅列となってビートとして機能しません。
「バトル」の内容は単純ですが、物語上で重要なポイントは「バトル」がその映画の内容を左右するとも言えることです。
ジャンルを決めると言っても過言ではありません。
アクション映画なら「バトル」でアクションをするべきだし、ラブストーリーなら「バトル」で恋の駆け引きをしているべきなのです。
『ロッキー』はボクシング映画と思う人がどれくらいいるのでしょうか?
もちろん設定上ボクサーですし、ラストも壮絶な試合のシーンで、ボクシングの印象はとても大きいです。
レンタルビデオ屋に並べるならスポーツ映画のコーナーになるでしょう。
しかし、物語の構造上では『ロッキー』は恋愛映画です。
「バトル」でエイドリアンをデートに誘い、ミッドポイントでキスをして、ラストの試合も愛を証明するため20ラウンド戦い抜くというのが目標で、それを達成したことに観客もロッキー自身も叫ぶのです。
テーマは観客が決めるものなので、解釈はもちろん自由ですが、『ロッキー』が他のスポーツ映画とひと味ちがう感動を生むのはラブストーリーだからです。
(※ちなみにスポーツ映画は「アンダードッグプロット」という弱小チームが新しいコーチと成り上がっていくタイプが多いのです)。(イルカ🐬)
★まとめ:
・アクト2はミッドポイントへ上がる(下がる)までで一区切り。
・トーナメントを勝ち上がるように「バトル」を繰り返す。
・「バトル」の数は解釈次第。
・葛藤や戦いにならないような楽な「バトル」では機能しない。
・「バトル」によってジャンルが決まる。
イルカの音声解説はこちら(※しまうまさん抜きで録音しています)
音声解説のyoutube版はこちら
※パソコン画面を見ながら喋っていたためクリック音など入ってしまいました。
三幕構成の書籍についてはこちら→三幕構成の本を紹介(基本編)
三幕構成のビート分析実例はこちら→がっつり分析シリーズ
文章表現についてはこちら→文章添削1「短文化」
文学(テーマ)についてはこちら→文学を考える1【文学とエンタメの違い】
キャラクター論についてはこちら→キャラクター概論1「キャラクターの構成要素」