「オープニングイメージ」「ファイナルイメージ」の活用ヒント(中級編23)

分析会で話題に出た内容で、まとめておきたいことを記事にしておきます。

難しい内容ではありませんが、ビートを知ってる前提の話で、初心者向けではないので「中級編」としました。

三幕構成 中級編(まえおき)

三幕構成の中級編と称して、より深い物語論を解説しています。

中級編の記事ではビートを含む用語の定義や、構成の基本、キャラクターに対する基本を理解していることを前提としています。しかし、応用にいたっては基本の定義とは変わることもあります。基本はあくまで「初心者が基本を掴むための説明」であって、応用では例外や、より深い概念を扱うので、初級での言葉の意味とは矛盾することもでてきます。

武道などで「守」「破」「離」という考え方があります。初心者は基本のルールを「守る」こと。基本を体得した中級者はときにルールを「破って」よい。上級者は免許皆伝してルールを「離れて」独自の流派をつくっていく。中級編は三幕構成の「破」にあたります。

以上を、ふまえた上で記事をお読み下さい。(参考記事:「三幕構成」初級・中級・上級について

超初心者の方は、初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」から、ある程度の知識がある方は三幕構成の作り方シリーズか、ログラインを考えるシリーズからお読みください。

『コーダ あいのうた』のイメージ

参考記事:映画『コーダ あいのうた』『エール!』比較(三幕構成分析#83)

おおよそは分析会でお話したことですが『コーダ』では、トップシーンの「船」を「オープニングイメージ」として、ラストシーンの「車」を「ファイナルイメージ」として機能させる可能性があったように感じます。

機能させる場合、テーマを踏まえて束縛感や閉鎖感としての「船」の見せ方、そこから解き放たれる過程での「車」の使い方が必要になります。

たとえば「夜の車で、父親に歌ってあげているシーン」「試験会場に車で行くシーン」などのショットに工夫するべきだし、解き放つ存在であるV先生か恋人あたりに車をしっかりと絡めるという使い方をしなくてはいけません。

こういったことを踏まえて意図的に演出しているようには見えないので、この作品では「船」「車」もイメージアイテムとしては機能していないという分析にはなりますが、可能性を拾うことは、リライトではとても有効です。

『エール!』のイメージ

『エール』では、トップシーンは牛の出産です。

赤ん坊が産まれ、主人公はアクト2の中で、初潮を迎え、母親は娘を「ベイビー」扱いしていたところから、旅立っていきます。

ラストシーンでは車というよりは、車に戻って走っているショットで終わります。

出産~大人になって旅立ちというイメージが、拾えそうな気配はありますが、こちらでもやはり、意図的に使っているとはいえない箇所が多々あります。

オバマと名付けられた子牛を撫でながら、話しかけているシーンがあるのですが、後半(母に美容室に誘われるシーン)では、ただ世話をしている説明的なシーンになってしまっています。

作者が、意識的に使っているなら、ここでペイオフができたはずです。

とはいえ、牛の出産から、主人公自身の成長というように、アイテム自体を変えていくイメージの使い方というのは、新しいアイデアなので、今後の創作に使えそうだと感じていましたし、これまでも、こういう使い方をされているのに見落としてしまっていたらイメージアイテムがあったのではないかと感じました。

緋片イルカ 2022.10.31

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