映画『真夏の方程式』(三幕構成分析#197)

https://amzn.to/4aADIgm

※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

※この分析は「ライターズルーム」メンバーによるものです。

【ログライン】

湯川は宿泊先の旅館で起きた殺人の謎解きを頼まれ、真実を解明していく中で旅館の家族が抱える秘密と罪を見抜くが、巻き込まれた子供たちの未来を守ろうとする大人たちの意志を尊重して成実に今後のことを託す。

【フック/テーマ】愛する人を守るためであれば罪は許されるか

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「美しい海に潜る女性」美しい海に潜る川畑成実。自然保護のために闘う成実がこのストーリーのキーパーソンであることを印象付ける。OPイメージ。

GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「ミステリー」

Premise/CQ「プレミス」/「セントラル・クエスチョン」:「刑事の死亡事件を解明していくうち、過去の犯罪の真実が見えてくる」

want「主人公のセットアップ」:「偏屈な物理学者」境保護の討論会に有識者として招待されているが遅刻して現れる湯川。知的だが、孤独。変わり者。

Catalyst「カタリスト」:「刑事・塚原の死亡」湯川の宿泊している旅館に泊まっており、成実の母と意味深な会話を繰り広げていた刑事塚原が死亡する。

Debate「ディベート」:「岸谷が現れる」岸谷が塚原死亡の現場であり、湯川のいる玻璃ヶ浦にやってくる。塚原が過去にホステス殺害で逮捕した、仙波の家を訪ねていたことを聞く湯川。

Death「デス」:「成実の母が岸谷の話を聞く」成実の母が湯川と岸谷の会話を聞き、過去のホステス殺害事件とのつながりも捜査されていることを聞いてしまう。一見してデスではないようなシーンだが、のちに解明してくる過去の事件とのつながりを考えると、成実一家にとってデスとなる。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「岸谷に事件の真相解明を依頼される」岸谷は湯川に、塚原死亡事件の真相解明を依頼するが、湯川はあまり興味を示さない。しかし、殺人事件解明ストーリーのため、事件解明へと動きがで始める点がPP1。

F&G「ファン&ゲーム」:「湯川と恭平、実験で深海を見る」湯川は恭平に海の中を見せてやろうと、器具を作り二人で海の中を見る。子供嫌いな湯川だが、恭平は特別な存在であり思い入れが深まっていることをみせるシーン。

Battle「バトル」:「湯川、旅館を調べる」恭平の屋上に煙突があるという話を聞き、湯川は旅館を調べ始める。屋上の様子、事件のあった部屋など。

Pinch1/Sub1「ピンチ1」/「サブ1」:「岸谷に旅館の家族を調べさせる」旅館の家族たちが隠し持つ秘密に感づいた湯川は、岸谷に調べさせる。

MP「ミッドポイント」:「湯川、塚原殺しの犯人をほぼ断定」湯川は岸谷ら東京の警察とのWEB会議の中で、塚原殺しの犯人は「川畑重治」であると考えていると伝える。ただまだ仮説で実証して初めて真実になると。慎重に捜査を進めないとある人物の正体がねじ曲がるという湯川。犯人の推定、新たな謎の登場。

Reward「リワード」:「重治の自首」 MPで探偵役湯川が推定した犯人の自首。MPとも取れるポイントだが、本作が塚原殺人の犯人探しという単純なラインのストーリーではないためMPのリワードと考える。

Fall start「フォール」:「塚原死亡は事故だと供述する重治」重治は警察に、建物の老朽化による事故により塚原は死亡したと供述する。

Pinch2/Sub2「ピンチ2」/「サブ2」:「重治と仙波の過去、塚原との関係」仙波は自身の子供である成実を守るため捕まったという真実がわかる。過去のホステス殺害事件の真の犯人は成実だった。仙波冤罪の真実を探りにきた、塚原死亡に旅館の家族が関わった理由が明らかになる。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「過去の事件の真実がわかる」仙波は自身の子供である成実を守るため捕まったという真実がわかる。過去のホステス殺害事件の真の犯人は成実だった。仙波冤罪の真実を探りにきた、塚原死亡に旅館の家族が関わった理由が明らかになる。

DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「仙波は湯川に何も語らない」湯川はホスピス病棟にいる仙波に会いにいくが、仙波は何も語らない。湯川の残していった現在の成海の写真を眺めて、仙波は病床で一人涙を流す。

BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「湯川が重治に真実を語る」湯川は獄中の重治に会いに行き、仙波と成実が親子であったこと、それを重治は知っていたこと、事件の真の犯人は知らぬ間に共犯者にされていた恭平であったことを告げる。

Twist「ツイスト」:「重治は湯川の話を一蹴する」湯川の話す話を重治は一蹴し、涙を流しながら全部間違っているという。成実は私の娘だと。湯川はそれを静かに受け入れる。重治は真実より家族を守る道を選ぶ。それはきしくも成実の真の父である仙波がとった行動と同じものである。

Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「罪に気付き恭平」恭平は自分の罪に気付き、湯川を探すが見つからない。

Epilog「エピローグ」:「罪を償おうとする成実に恭平の未来を託す」湯川は成実と二人で美しい海に潜る。そして、罪を償おうと思うという成実にのちに罪に気づく恭平に真実を語った上で自分の進むべき道を決めろという湯川。

Image2「ファイナルイメージ」:「罪を抱える若者と共に生きていく湯川」湯川は真実を知り落ち込む恭平に、君は一人じゃないとはげます。

【作品コンセプトや魅力】

大切な人を守るためであれば罪を犯しても良いのかというのが作品テーマであり、だれかを守るための覚悟や自己犠牲、どんな形でも思い合う家族愛が本作の魅力。

【問題点と改善案】(ツイストアイデア)

旅館での殺人事件、過去の殺人事件、冤罪、という3つの事件が複層的に絡まり合い、犯人のミスリードもあり一見で全てを理解するのは難しい。過去のラインをもう少し上手く配置することはできなかったのか。
また、「愛」というオブラートに包み罪と向き合い償うという行為が若干疎かにされている。成海の過去の殺人、恭平を巻き込んだ重治、冤罪のまま死ぬ仙波。感動をよぶ部分でもある一方で、キャラクターの無責任さに違和感も覚えてしまう。真っ直ぐに罪と向き合い贖うキャラがメインの中に一人は欲しい。

【感想】

単なる犯人探しのミステリーではなく、血のつながりを超えた家族愛には胸を打たれる。ミステリーにおいて、探偵役が不変で信用できる存在であることはストーリーの魅力にも成ると再認識した。現実と過去が複雑に入り混じり、真相が分かった際のカタルシスも大きいが、わかりにくい部分も多く伏線の多い話の難しさも感じた。

(月三、2024.03.09)

SNSシェア

フォローする