ドラマ『ブラック・ミラー』シーズン7「ユーロジー」(三幕構成分析#288)

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※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

【ログライン】

昔の恋人キャロルの訃報を受けたフィリップは、没入型の追悼サービス「ユーロジー」で写真の中に入り込み、彼女との過去を辿り始める。消したはずの記憶を取り戻すうち、彼は、長年キャロルを憎み続けてきた理由が、自分の誤解と身勝手さから生まれたものだったと知る。歪めていた過去と向き合ったフィリップは、止まっていた想いに区切りをつけ、キャロルとの思い出を受け止め葬儀に参加する。

【フック/テーマ】写真の中の記憶に入り込める技術/過去の記憶と向き合い、自分の身勝手さや当時できなかったことも含めて、思い出を受け止め直せるか

【ビートシート】

Catalyst「カタリスト」:「キャロルの訃報」没入型の追悼サービスを提供しているユーロジー社から、フィリップの元恋人であるキャロルが亡くなったという連絡がくる。彼女の追悼式のため、フィリップの記憶から思い出を提供して欲しいと頼まれる。

Death「デス」:「3枚の写真を準備」

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「写真の中へ入る」

Battle「バトル」:「写真を撮った時の状況から記憶を辿っていく」キャロルがチェロを弾いている写真など、複数の写真に没入し、徐々に記憶を取り戻していく。ただ、キャロルの顔だけは思い出せない。

MP「ミッドポイント」:「会いに行った時の品を取り出す」遠距離恋愛になり、フィリップの浮気で喧嘩した2人。フィリップはプロポーズのため、キャロルに会いに行く。その時を思い出し、レストランのパンフレット、指輪を取り出す。

Reward「リワード」:「消したい原因となった記憶を辿る」

Fall start「フォール」:「プロポーズの記憶」フィリップにとっては一番辛い記憶を辿る。プロポーズにも答えてもらえず、恥をかかされたと思っていた。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「手紙があったことを知る」ケリーの発言によって、キャロルが手紙を書いていた事を知る。

DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「彼女の顔が見たい」自分の行動が違っていたら、キャロルとの未来があったのかもしれない。フィリップは初めて彼女の顔が見たいと思う。インスタントカメラで1枚だけ写真をとっていたことを思い出し、現像に行く。

BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「写真の中へ」彼女が映っていると思っていた写真は、ホテルの床を撮ったものだった。散らばった物の中に自分宛の手紙を見つける。

Epilog「エピローグ」:「彼女の笑顔を思い出す」
キャロルが自作したテープを発見し、再生する。チェロの曲が流れる。彼の中でキャロルの笑顔が蘇る。

【作品コンセプトや魅力】

写真の中の記憶に入り込む新技術を使い、元恋人への憎しみを抱え続けてきた男が、自分の誤解や身勝手さによって歪めていた過去と向き合う物語。テクノロジーが事件を起こすのではなく、人間が都合よく編集してきた記憶を暴く装置として機能している点が魅力。遺族へ思い出を提供するという目的の中で、憎しみに覆われていた過去の想いを受け止め直していく、苦くも温かい感動ドラマになっている。

【感想】

「好き」4「作品」5「脚本」5
写真の中の記憶に入り込むというSF設定ながら、描かれている感情はとても身近で、自然に感情移入して観ることができた。誰にでも、自分が傷つかないために相手を悪者にし、都合のいい形に変えている記憶があると思う。この作品では、そうした記憶の歪みが、過去を辿るほどに思い出だけでなく、自分の未熟さや後悔まで浮かび上がらせる点が刺さった。手紙を読んでいれば二人には別の未来もあったのかもしれないと思わせるところに、強い切なさもあり、派手な恐怖やどんでん返しはないが、「自分の記憶は、本当に相手を正しく見ていたのか」と静かに問いかけてくる、苦くて温かい気持ちになるエピソードだった。

(米俵、2026.5.5)

『ブラック・ミラー』全作品採点

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