プロットを考える5「ジャンルのセットアップ」

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前回は、アクト1における1番目のビート「オープニングイメージ」を考えました。
『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』では、次のビートは「テーマの提示」(Theme Stated)です。
しかし、ここで考えるビートシートで2番目にくるのは「ジャンルセット」です。

これは恋愛映画なのかアクション映画なのかホラーなのかといった「ジャンルを明確にする」ビートです。
「オープニングイメージ」のシーンでジャンルが明確になっていれば、それだけで昨日していると言えます。
1つのビートに対して、1つののシーンが必要なわけではありません。
ビートの要件を満たしていれば、機能しているといえます。

プロの映画製作では、企画段階でジャンルは明確になっているし、宣伝でも伝わっている前提があるので、あえて作中で語る必要はないことかもしれませんが、自主映画などではブレてしまっていることが見受けられます。

たとえばミステリー映画に恋愛要素が入るのはかまいません。
メインストーリーに対してサブのストーリー、サブプロットと呼びます。
サブプロットから始まる映画はありません。

ヒッチコック監督の『レベッカ』(Rebecca、1940年)は、映画開始から22分でプロポーズのシーンまでは恋愛映画のように展開します。
しかし冒頭のモノローグでサスペンスだと方向付けているので、これから起こる事件を観客はもどかしく思いながら見ていられます。
その「ジャンルセット」がなくて、ヒッチコック監督を知らないような人が見たら、映画の方向性がとつぜん変わったように感じてしまうでしょう。

意図的にジャンルをミスリードする方法もあります。
コメディ映画などで「シリアスなシーンから始まり、夢だった」という始まり方をしたり、ホラー映画で「きわめて牧歌的なシーンから始まり、唐突にホラーシーンが入る」という始まり方をするものです。

意図的でないジャンルのブレは、観客に負担をかけます。
観客に負担をかけるということは、観客が興味を失いやすいということです。

優秀な監督であればジャンルを演出や役者の演技でコントロールすることもできます。
ロマン・ポランスキー監督の映画では日常的なシーンでもサスペンスの香りが漂います。

★まとめ:
・ジャンルが明確でないと観客に負担がかかる。
・狙いがないのであれば、きちんと明確にするべき。

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