初心者の方はこちらからどうぞ→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」
「3本のキャラクターアーク(ポジティブ・ネガティブ・フラット)」として考えたキャラクターアークはあくまで主人公に関するキャラクターアークです。
今回は、主人公以外のサブキャラクターについてのアークを考えていきます。
【主人公以外のキャラクターにもアークが必要?】
キャラクターを人間として考えれば、どのキャラにもWANTとNEEDがあります。
つまり、それぞれのキャラクターを主人公にして別の物語を創ることは可能です。スピンオフ作品にもなります。
スピンオフ作品では、元作品の主人公は話題にのぼるぐらいで登場しないか、出てもカメオキャラのように一瞬登場するだけだと思いませんか?
1本の物語で語るべきでは1つか2つのテーマです。
テーマを背負っているのが主人公です。(メインプロットと呼びます)
サブキャラクターにWANTを持たせることは必要ですが、その人物がNEEDを見つける必要はありません。つまりアークは必要ありません。
アークを入れすぎるとテーマがぶれてしまうからです。
【入れられるなら入れてもいい】
もちろん構成が巧みでメインプロットを邪魔しない範囲で、サブキャラクターにアークを作ることができるなら、入れることは可能です。
しかしアークを描くには最低限「セットアップ」→「カタリスト」→「デス」→「MP」程度のビートは必要です。
学生時代の数学のグラフを思い出していただきたいのですが、曲線を描くには、いくつか点がないと描けないのと同じです。
だから、サブキャラクターにアークをつけるのは難しいのです。
「メインプロットを邪魔しないように」ということは、主人公が登場しているシーンの中で、さりげなくサブキャラクターにビートをつけなくてはいけません。
サブキャラクターだけのシーンを出すということは、そのキャラの格が上がり、それが多くなると主人公が二人いるように見えるからです。
テーマに対比があれば、二人の主人公をたてて、コントラストを生むプロットにしていくことは可能です。
【サブプロットの考え方】
『Save the Catの法則』では、Bストーリーと呼ばれていますが、サブプロットと呼んでも意味は同じです。
メインプロット以外のストーリーのこと。
これは「メインプロットのテーマをより掘り下げるため」に入れるというのが基本的な考え方ですが、必ずしもそうでないことも多くあります。
メインプロットだけでは疲れてしまうので、ちょっとした箸休め的に使われているものもあります。
ビートでは「ピンチ1」と「ピンチ2」で、入ることが多く、
また数学のグラフを思い出していただくと、MPを軸とした線対称のように配置されています。
例えば、ひねくれ者のキャラクター(スケプティックと呼びますが)が、ピンチ1では主人公をバカにしていて非協力的だったのが、ピンチ2では「仕方ねえなあ」などと言いながら協力的になる。
これは、MPによる主人公の変化を経て、ひねくれ者の主人公を見る目が変わったとも言えます。
しかし、このキャラクターが「キャラクターアーク」と呼ぶほど、「成長・変化をしたか?」というと、そんなことはありません。
こういう態度が変わっただけのような表面的な変化を「シフト」と呼びます。
これはアークと違って、サブキャラクターにも簡単に入れることができて、キャラクターを立てるのにも有効です。
【群像劇のアークとシフトについて】
群像劇・アンサンブルは、登場人物が多く、キャストも豪華だとすると主人公が多いように見えますがアークは作品によりけりです。
キャストのレベルとは別に、はっきりしたアークをもって、主人公の役割をしているキャラがいるものもあれば、テーマとか場所、日にちなど、なんらかの共通項で関連はしていもて、どのキャラもシフト程度の変化しかしていないのを寄せ集めのような作品もあります。
『『マグノリア』』では、違うキャラクターでビートを機能させて、演出的なプロットアークで統一感を持たせています。
基本のキャラクターアークが描けない作者が、メインテーマから逃げるように、次々にキャラクターを出して、なんとなくまとめて誤魔化している作品も見受けられます。
映画には時間という制限があるので、「サブプロット・Bストーリー」を膨らませていくと、かならず構成の問題にぶつかります。
小説では、大長編にすれば、それぞれのアークを描くこともできますが、それを発表する媒体があるかどうかは作者の知名度と合わせて、考えなければなりません。
構成について初心者の方はこちら→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」
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