映画『博士と彼女のセオリー』(三幕構成分析#242)

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※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

【ログライン】

筋萎縮性側索硬化症になってしまったスティーブンは、余命宣告を受けても妻の支えにより論文を発表し続け、生涯をかけて時間についての理論を打ち立てていく。

【フック/テーマ】
難病に侵された若き物理学者/時間が育んだ愛、身体的不自由と知的行動の関係

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「家族写真の撮影」「反時計回りするスティーブン」
ジェーンとの要素を表す「家族」と生涯かけて論じた「時間」を表している。

GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「ジェーンとの出会い」

Premise/CQ「プレミス」/「セントラル・クエスチョン」:「身体の症状にとらわれることなく知的行動は続けられるか」

want「主人公のセットアップ」:「頭脳明晰、生活は奔放」

Catalyst「カタリスト」:「つまずく」
つまずく:駅で歩行に違和感。病気の前兆。

Death「デス」:「ALSと診断される」
診断:筋萎縮性側索硬化症という難病の診断が下る。頭脳(知的行動)に影響はないが、体は一切動かせなくなっていく病気。余命は2年。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「論文のテーマが決まる」
「時間」をテーマに論文を書くことを決める。(余命いっぱい研究を続けていく意思がある)
「論文を発表していく」物語が始まる。

F&G「ファン&ゲーム」:「病状の悪化」
時間の経過とともに自由がきかなくなっていく。映像から見る難病の生きづらさ。

Pinch1/Sub1「ピンチ1」/「サブ1」:「ジェーンとの結婚生活」
ジェーンの献身と子育て。家族として理想像を描く。

MP「ミッドポイント」:「新しい論文で絶賛される」
博士号を取得した論文とは別で、新しい論文が絶賛される。
ジェーンとしても苦労も報われた気持ちになる。

Fall start「フォール」:「喉を詰まらせるようになる」
喉の機能が衰える=呼吸ができなくなる予感。

Pinch2/Sub2「ピンチ2」/「サブ2」:「ジェーンの限界」
ジェーンが介護と子育てに疲れ、心の支えを欲し浮気に走る。理想とは離れた現実味のある描写。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「声を失う」
すでにペンを持つことが難しく、声で論文発表するほかない状態だったが生命維持のため声を失う。オールイズロスト。

BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「音声合成装置を手に入れる」
看護婦エレインの協力もあり、円滑なコミュニケーションと合成音声を手に入れる。

Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「受賞する」

Epilog「エピローグ」:「ジェーンとの別れ」
離婚し、別々に伴侶を得る。ジェーンはスティーブンのよき理解者になる。

Image2「ファイナルイメージ」:「回想」
ジェーンとの生活を出会いまで回想する(時間が巻き戻る)。

【作品コンセプトや魅力】

伝記映画、理論物理学者、スティーヴン・ホーキング博士、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、配偶者の苦労、患者家族の子育て、時間、論文、コミュニケーション方法、夫と妻両方の浮気、第87回アカデミー賞5部門ノミネート、エディ・レッドメイン主演男優賞、アンソニー・マッカーテン脚本、ジェームズ・マーシュ監督

【問題点と改善案】(ツイストアイデア)

主人公であるスティーブンの葛藤が浅かったように思えた。ユーモラスな性格ということで処理できる部分ではあるが、難病に直面した時の心の機微があれば更に没頭できる気がする。
罹患前の頭脳明晰さ、思考を止めない様子、この部分ももう少し掘ったほうが物語に深みが出るのではないか。
ただし、元妻のエッセイから脚本化したものなので、そういった部分の脚色は難しかったのかもしれない。

【感想】

「好き」4「作品」4「脚本」3
成功と愛の物語だと捉えればクラシックな構成だと思いました。
クラシックな中にも配偶者側の理想と現実が描かれており、綺麗事だけでないのが好印象でした。
性的な話はユーモアを交えて話し、セックスシーンを徹底的に排除したのもよかったです。「精神的な愛」や「深く理解し合う」部分を邪魔しないので。
愛の形は理解者へと変容してしまいましたが、それも「時間」が成す技だと考えさせられた物語でした。
(雨森れに、2025/9/29)

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