映画『爆弾』(三幕構成分析#292)

https://www.netflix.com/title/82130725

※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

【ログライン】

 都内で爆発事件が起き、爆弾の在処を仄めかすスズキの取り調べにあたった類家たちは、スズキとの頭脳戦に挑み、序盤は勝つが、やがて敗北、それでもスズキの動機や真犯人を突き止め、事件は解決するが、スズキの身元と最後の爆弾の在処はわからないまま終わる。
【フック/テーマ】
佐藤二朗の怪演/善悪・仲間意識

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「なし」
 ファイナルイメージと対になるものがないため、なし。
GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「秋葉原で爆発」
 最初の爆発とともに、タイトルが表示される。ここにおいて、本作が爆弾を扱った犯罪の物語であることが示される。
Premise/CQ「プレミス」/「セントラル・クエスチョン」:「スズキタゴサクが何者であるか突き止めることはできるのか」「爆弾の在処を突き止め、次なる爆発を阻止することができるのか」

want「主人公のセットアップ」:「類家、清宮と共に初登場」
 もじゃもじゃ髪にスニーカーという独特な出で立ちの類家。優秀であることを思わせる。
Catalyst「カタリスト」:「九つの尻尾ゲーム」
 スズキは清宮相手に、「九つの尻尾ゲーム」を仕掛ける。ここにおいて、類家はあくまで取り調べの傍観者。
Debate「ディベート」:「ハセベユウコウ」
 九つの尻尾ゲームの中で、スズキは「ハセベユウコウ」の名前を口にする。
Death「デス」:「ハセベユウコウのスキャンダルと死」
 そしてハセベユウコウは元々警察官であり、あるスキャンダルにより警察全体を震撼させたこと、ハセベ自身は自殺していることが示される。
PP1「プロットポイント1(PP1)」:「爆発の死者が出る」
 東京ドーム付近での爆発に巻き込まれ、重体だった被害者の死が知らされる。スズキの道楽ではなく、事件へと変化する。
F&G「ファン&ゲーム」:「九つの尻尾ゲームは存在しない」
 スズキが言い出したゲームは架空のものだとわかる。スズキのペース。
Battle「バトル」:「九段下の爆弾」「代々木公園の爆弾」

Pinch1/Sub1「ピンチ1」/「サブ1」:「等々力、ハセベの秘密を知る」「なし」

MP「ミッドポイント」:「1回戦終了」
 スズキのヒントから代々木公園の爆弾を見抜けなかった清宮たちは、爆発により多数の被害者を出してしまう。怒りに駆られた清宮はスズキの指をへし折るが、スズキは1回戦が終わっただけだと、屁でもない。2回戦の相手は誰だと挑発する。
Reward「リワード」:「ハセベの映像を見つける」
 倖田と矢吹は、スズキのスマホから得た住所を頼りに、民家に到着。その中では、ハセベユウコウの死の直前に撮ったと思しき映像が遺されていた。倖田は戻るように言うが、矢吹はさらに奥へと進む。
Fall start「フォール」:「民家で爆発」
 奥の部屋では、ハセベの息子(石川辰馬)が死んでいた。矢吹は地雷装置を踏んでしまい、爆発。倖田を守って、重体に陥る。
Pinch2/Sub2「ピンチ2」/「サブ2」:「等々力、ハセベは仲間だった」「なし」

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「駅爆発」
 類家の奔走も空しく、阿佐ヶ谷駅の避難は解除され、その直後の自動販売機に仕掛けられた爆弾が爆発する。類家が負ける。
DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「お役御免」
 スズキは全ての計画を知らされていないと確信をついた発言を類家はするが、爆発の責任を取らされ、お役御免になると、それ以上の追及をやめる。
BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「3回戦スタート/最後の爆弾」
スズキは最後の爆弾があると発言し、そのヒントを出す。そしてそのヒントから石川明日香(=ハセベの元妻)が真犯人であると突き止める。
Twist「ツイスト」:「明日香の持つ最後の爆弾」
 スズキは明日香に最後の爆弾を送っていた。それはスズキ自身を殺させることが目的。
Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「最後の爆弾はフェイク」
 爆弾は回収され、事件は収束。類家は綺麗事から逃げないとスズキに言い切り、取り調べは終わる。
Epilog「エピローグ」:「スズキの身元は不明のまま」
 最後の爆弾は見つかっていない。
Image2「ファイナルイメージ」:「なし」
 オープニングイメージと対になるものがないため、なし。

【作品コンセプトや魅力】

 本作の最大の魅力は、一にも二にもなく俳優佐藤二朗の怪演だろう。福田雄一監督を筆頭にコメディ俳優としてその地位を確固たるものにしている彼が、お笑い一切なく挑んだ。そのスズキタゴサクという役は多くの人を魅了し、その俳優としての力量を見せつけたといっても過言ではない。その年、『国宝』が席巻した第49回日本アカデミー賞において、最優秀助演男優賞を獲得したことはその証左と言えよう。

【問題点と改善案】(ツイストアイデア)

 大きな問題点は2つある。
 まず1つは、「ハセベユウコウ」という重要人物の名前である。彼の初登場は名前のみで、聞き取りづらさの問題もあるかもしれないが、「ハセベユウコ」と聞こえる。名前だけ聞くと女性だと錯覚し、スキャンダルを起こした女性警察官がいるのだと思って物語を追う。ところが、離婚した元嫁がいるとかそういう話が出ると、女性だと思っていたが、違うのかとなり、加藤雅也氏演じる長谷部有孔が実際に登場すると、男だったのねと理解する。原作は未読であるが、小説では文字情報なので、字面を見ると、誤認する恐れは低いだろう。しかし映像となると話は別だ。ちゃんと聞き取れよという指摘はごもっともであるが、こういった不必要な誤認は、物語への没入感を削ぐのもまた事実。重要人物である以上、男であるとわかりやすい名前に変更するのもありだったのではないか。
 そして2つ目にして最大の問題点は、ACT3の雑さ及び駆け足に処理しすぎたが挙げられるだろう。得体の知れない男、スズキタゴサクが、ACT1〜2を通して、警察陣を翻弄する様はヒリヒリするし、面白い。爆弾がどこに仕掛けられているのかというサスペンスが肥大化し、ACT2後半においてはそれが東京中へと波及する。要は大風呂敷を広げているということだ。割合にしても、PP2は86%地点としっかり緊迫感を積み上げているという印象を受ける。しかし肝心要のネタバラシが、極めて個人的な動機および真相である。それもACT1、2で振られていない事柄すぎて、後出し感が否めない。それではなんでもありのご都合主義と言われても文句も言えないだろう。というか、爆弾を仕掛けて爆発させる必要性がなく、なるほどねと合点がいかない。オチをそういう風に持っていきたいのであれば、序盤から中盤においてケアをしておく必要があっただろう。

【感想】

「好き」4「作品」3「脚本」3
 最近になってNetflixで配信され、公開時は映画館で観なかった人たちもNetflixで観たという話をよく聞く。話題になった作品ではあるし、その心理は非常に理解でき、私の周辺でも、『「爆弾」』を観たといっている人は多い。そしてみな、「途中まではいいけど、ラストがな、、」と口を揃えるのである。上記問題点で挙げたように、ACT3の処理の雑さが気づかれているということだ。公開当初も佐藤二朗の演技こそ賞賛されるが、その他の声が聴こえないのも、その証左と言える。
 また、主人公が物語に本格的に介入する(=スズキの取り調べを行う)のがACT2後半に入ってからと遅く(60%地点で81分)、主人公が主人公たる魅力を十分に発揮する間なく、終わってしまったような印象を受けた。
 原作ものである以上、大筋や結末の改変はできなかったのかもしれないが、脚本に携わるものの端くれとして、役者の演技よりも脚本が評価される、そんな作品を創りたいと思えた分析だった。
(山極瞭一朗、2026/05/23)

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