言動決定要素について順番に考えてきました。前回は「脳内文法」について考えました。今回は「脳内辞書」の仕上げとしてキャラクターコアとの関連について考えます。
言葉の扱い方は、無意識的で、個性を含むものであるので、これはキャラクターコアとも直結します。以前に【口癖によるキャラクター化】ということを考えました。
また「価値観とキャラクターアーク」や、「主人公のWANTとNEED」とも関係します
これらののことをもう少し考えてみます。
人は無意識に囚われているものがあります
それは小さい頃の教育であったり、経験であったりで培われたもので、認知行動療法では「認知のゆがみ」として以下のようなものがあります
1:全か無か思考(all-or-nothing thinking)
白か黒かという極端な考え方しかできない。小さな失敗に対して→「すべて失敗だ」。
2:一般化のしすぎ(overgeneralization)
1つの出来事を一般的な法則にしてしまう。一回失敗しただけ→「いつもこうだ」。
3:心のフィルター(mental filter)
1つのよくないことに拘り、他を無視してしまう。99人が褒めてくれた作品なのに、1人の反対意見を気にして→「失敗作だ」。
4:マイナス化思考(disqualifying the positive)
良いことを無視するだけでなく、マイナスに変えてしまう。せっかく、いいことがあった→「悪いことが起きる前兆だ」。
5:感情的決めつけ(emotional reasoning)
自分の感情を絶対視する。不安を感じている→「失敗するに違いない」。
6:結論の飛躍(jumping to conclusion)
確かでないものを推論で決定づける。A:心の読み過ぎ。挨拶しても返してもらえなかった→「自分は嫌われている」。B:先読みの誤り。お腹が痛い→「ガンに違いない」。
7:誇大視と過小評価(magnification and minimization)
事実をおおげさにしたり過小評価したりする。点数が5点上がった→「俺は天才だ!」と言う。点数が5点下がった→「もう受験は失敗する」。
8:すべき思考(should thinking)
「~すべき」「~すべきではない」と決め付ける。デートに誘われた→「異性と出かけるべきでない」。
9:レッテル貼り(labeling and mislaveling)
レッテルを貼って現実を見ない。「わたしはブサイクだ」→褒められても信じない。
10:自己関連づけ(personalization)
自分に関係ない出来事も、自分のせいだと思う。祖母が病気になった→「私が悪い子だから」。
これらは思い込みで、その背後にはスキーマと呼ばれる絶対的信念があります。これはキャラクターコアと同じものと言えます(詳しくは次回)。
ともかく、ここではこういった思い込みから、無意識な言葉使い、口癖が生まれてきているということを考えてみてください。
無意識の現れは、本人は気付かないことが多いのですが、リアルなキャラクターを描くためには作者は掴まなくてはなりません。
掴んで一言で表すことはできなくてもかまいません。無意識は言語化すると、変型すると無意識そのものではなくなってしまうからです。言語では無意識の領域は扱えないのです。
それでも、感覚的に掴まなくてはいけません。
具体的な作業は単純なことで、このキャラクターは「この状況でこんなことをするだろうか?」「こんな言い方をするだろうか?」ということを、作者自身の感覚ではなくて他者になりきって感じることです。
それが推敲になります。
安易な人間観しか持たない作者の物語には、薄っぺらい人物しか出てきません。
真剣にキャラクターのことを考える努力(推敲)をしない物語も同じです。
次回は……キャラクター概論27「スキーマとキャラクターコア」
緋片イルカ 2019/08/09
構成について初心者の方はこちら→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」
三幕構成の本についてはこちら→三幕構成の本を紹介(基本編)
文学(テーマ)についてはこちら→文学を考える1【文学とエンタメの違い】
文章表現についてはこちら→文章添削1「短文化」
「三幕構成について語ろう」という掲示板もありますので、ご自由にご参加ください。