物語を三幕構成から分析する意義とは?

【テーマは構成で決まる】

わかりやすいように具体例で考えてみましょう。

「苦しい環境のシングルマザーが、男性と出会って幸せになる話」

があるとします。つまらない例ですがシンデレラの現代版とお考え下さい。

あなたが作者で、この物語を100枚の中編小説として描くとき「男性と出会うシーン」は何ページあたりになるでしょうか?
「そんなのわからない!」と感じる方は、これまで構成ということについてあまり考えたことないかもしれません。

ハリウッドでも使われている三幕構成という考え方では、物語の時間配分にまでセオリーがあります。

ラブストーリーとして描きたいのであれば、10ページまでには男性と出会い、25ページでは男性との交流が具体的に始まらなくてはいけません。

もちろんページ数は目安ですし、基本セオリーなので、そうすることの意義さえわかっていれば、崩すこともできます。

しかし、次のような構成だったら、読者はどう感じるでしょうか?

主人公のシングルマザーとしての苦労話(たとえば子供の問題や、職場でのトラブル)が70ページぐらいまで描かれて、80ページぐらいでようやく男性と出会う。
ハッピーエンドであることに変わらなくても、ラブストーリーというよりはシングルマザーの苦労話にみえてしまうでしょう。

どちらが正しいとか、良いとかいった話ではありません。
何を伝えたいか=読者にどう感じさせたいかによって、構成が変わるということです。

いくら作者が「これはラブストーリーなんだ!」と主張しても、物語がそのように構成されてなければ、読者は共感しません。

作者の主張ではなく、読者が感じたものこそが「テーマ」なのです。
読者は、どう感じようと自由です。お金を出して買った物語を好きに楽しむ権利もあります。
しかし、構成を分析することで、作者の意図(あるいは失敗)が見えてきて、作品に対する味わいが増すのも事実です。

もちろん、あなたが書き手であれば、テーマを伝えるのに構成の技術は必須です。

【構成の型をストックする】

構成にはいくつもの型があります。こういうものを「ストーリータイプ」とか「プロットタイプ」と呼びます。

たとえば、上にあげたシングルマザーの話のベースは「シンデレラ」だと言いました。
主人公の年齢や状況を変えるだけで、いくらでも物語のバリエーションをつくれます。

「イジメにあって孤独な一人の少女が、理想の恋人にあって幸せになる話」

「独居の老婆が、ペットを飼うことにしてに幸せになる話」

「除け者にされているネコが、スマートな黒ネコとあって幸せになる話」

主人公が少女だろうが、老婆だろうが、動物だとしても、「マイナス状態にある主人公が、愛を得てプラスになる」という展開はシンデレラと同じだとわかりますか?

実はボクシング映画の『ロッキー』ですら同じ構造をしています。

「ボクサーとして知名度が低かったロッキー(マイナス状態)が、エイドリアンと出会い、本気でトレーニングをしてチャンピオンと戦うことで名声を得る(プラスになる)」のです。

こういった構成の型を、発想の引き出しにストックしてあれば、創作する際にはさまざまな応用が可能になります。

「物語のパターンは○○個しかない!」といった言い方をする人もいますが、それはこういう型のことを指していうのです。

それでは、いくつの型があるのかといえば、それは解釈次第です。
とくに講習会を開いたりテクニック本を書いている人は物語論を商売道具にしているので、「○○個だ!」と言い切る人が多くいますが、実際に分析してみれば無限にあると言えます。

メインストーリーは同じでも、細部を変化した亜種の型がたくさんあるのです。亜種には失敗している例も、成功している例もあります。そして、書き手にとっては、その細部の違う亜種こそが一番役にたつのです。

単純な型だけでは、あらすじは作れても、作品としては完成させられないからです(講習会を商売にしてる人の多くが、最前線で活躍されている作家でないのと関係するのかもしれません)。

すべてを分類して網羅することはできませんし、研究者ではないのでそうする必要もありません。あくまで発想の引き出しを増やすために分析するのです。

【キャラクターを掘り下げるヒントにもなる】

物語の構成法を批判する人のなかには「重要なのはキャラクターだ!」という人がいます。これも間違いです。

「キャラクターも構成も重要」だからです。どちらかだけではダメです。

ただし分析の上では構成からアプローチすることで、客観的に分析していくことができます。キャラクターの分析は難しいからです。

たとえば、先のシングルマザーの話で、ラストで主人公がプロポーズを拒んだとします。いったい何故でしょうか? 作中では理由が語られていません。
読者は解釈します。

「お金のためだ」

「子供のためだ」

「きまぐれだ」

「それこそ本当の愛だ」

などなど、その主人公をどう捉えるかは主観的になるのです。作中で理由が語られていないので、どれが正しいとも間違ってるとも言えず、ただの水掛け論になります。

一方、構成から分析する場合は単純です。

・男にプロポーズされる。
・主人公は断る。

このような展開だけを捉えていくからです。次のような展開になっていたら、どうでしょう?

・男にプロポーズされる。
・子供が「二人で生きていこう」と言う。
・主人公は断る。

主人公が断る理由をセリフで語っていなくとも、観客には答えが見えています。
上手い作家ほど「言わなくてもわかるように」書いているのです。セリフで説明する必要などないのです。

主人公の言動を、一本の線として分析していくと、キャラクターの一貫性や変化が見えてきます。これを「キャラクターアーク」と呼びます。
それが不自然な流れであった場合は「作者のご都合主義な展開になっている」ということも見えてくるのです。

このように、構成から分析することで、キャラクターについて考えることもできますし、文体や作家のクセといった個性も浮かび上がってきます。

【知らなくても書ける。けれど知っていて損はない】

三幕構成を理解したからといって、面白い物語が創れるとは限りません。
知らなくても面白い物語を創っている人はたくさんいます。けれど、知っていたからといって損はありません。

必ず三幕構成のセオリー通りにつくらなくてはいけない訳でもないし、知っていることで気付けることがたくさんあります。

これは経験則ですが、たくさん分析していくと物語構造が体に染み込んでいくので、思うがままに書いていても三幕構成になっていたりします。

数学の公式のようなものかもしれません。

教科書には公式が太字で書いてあります。それを使えば問題は解けます。しかし、繰りかえして暗記していなければ、テストでは使いこなせません。

作家になる人は、たくさん読んだり書いたりする当たり前の作業を通して、実は無意識に自分の公式を作っているのです。それがどういうルールか説明できなくても、自分が「良い」と思う感覚を養っているのです。

三幕構成の分析をするのは、その作家の公式を炙り出して、盗んでしまう作業に近いかもしれません。

学び方には相性があります。

数学でも、最初に公式を覚えてトップダウン式に身に付けていく人もいれば、計算問題をたくさん解くなかでパターンを理解するボトムアップ式が合う人もいます。後者の人は、分析するよりも同じ作家の作品を読み漁った方が見えてくるものがあるかもしれません。それでも、見えてきたものを公式としてまとめて、理解・確認しておくことは定着にも役立ちます。

いずれにせよ、物語を創ろうという気持ちがあれば、三幕構成は知っていて損にはなりません。

【読書会では最適解を探す】

読書会ではイルカがビートシートに基づく三幕構成を解説しています。
本来は、一人で黙々と読んで、考え、自分のものにしていけばいいのですが、グループで集まることによって、いろんな角度から検討することができます。

イルカの分析は一意見に過ぎません。別の捉え方があって構いません。むしろ、そういうところから学ぶことが読書会の目的でもあります。

一方で、ビートの定義に当てはまらないような明らかに「ズレた答え」というのはあります。もう一度、数学で喩えるなら、解法はいくつかあるけど、明らかに計算ミスを犯しているような分析もあるということです。
そのミスに気付けるのも読書会のよいところです。一人で黙々とやっていると、自分だけが正しいと思い込んでしまいます。

また読書会では「物語分析講座」として、少しずつビートの解説もしていきます。これは参加者に「公式」を理解してもらうのが一つの目的です。共通理解に基づくことなく、持論を展開するだけでは、主観的なケンカ、ネット上の言い争いのようにしかならない、不毛な意見交換になってしまいます。

継続的に参加・視聴していただければ、三幕構成に対する理解が深まるようにしていきます。

そして、理解の深い者同士による対話からは、深い発見が生まれることを期待しています。

イルカのビートシートは、本家となるブレイク・スナイダーのビートシートとは異なりますが、それは読書会の前身の「映画の勉強会」を続ける中で、改変した結果できてきたものです。ブレイク・スナイダーの功績は大きいですが、もう15年以上も前の本の受け売りで物語を作っていくのは時代遅れだと、僕は考えています。

こういった主旨に、ご賛同いただける方の読書会へのご参加をお待ちしています。遠方で来られない方のためには、当日の様子を録音した音声ファイルをアップしていますので聴いてみてください。質問などがあればご連絡ください。時間の許すかぎりお返事いたします。

『イルカとウマの読書会』はコチラから

緋片イルカ
2020/02/27大幅改稿
2020/03/07追記
2020/03/23追記

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