※あらすじはリンク先でご覧下さい。
※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。
※この分析は「ライターズルーム」メンバーによるものです。
【ログライン】
バヤンの巫女ニムが、奇行を繰り返す姪のミンを除霊し巫女を継承することで助けようとするが、失敗し、ミン以外が全員死ぬ。
【ビートシート】
Image1「オープニングイメージ」:「該当なし」
GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「バヤン」
タイでは精霊が信仰されていて良い精霊も悪い精霊もいる、とニムのモノローグで説明される。
人ならざるものの話のセットアップ。
Premise「プレミス」:「ノイは巫女の継承を拒んだ」
巫女は親族の中で女性のみに継承され、継承するタイミングは次期巫女の体調不良。
ノイは体調不良になったが巫女になりたくなくて逃げた。これが原罪となる。
want「主人公のセットアップ」:「ニム」「ミン」
服飾学校に通っていたニムは姉の代わりに巫女を継承。(助ける側の主人公)
ミンは巫女を信じていないが人ならざるものを感じている。(悪霊側の主人公)
代打の巫女と巫女を継承する素質のある者を対比して描いている。
Catalyst「カタリスト」:「ミンの奇行」
父親の葬式でミンは侮辱されたと喧嘩する。幻聴、最初の奇行。
Debate「ディベート」:「魔除け」
幻聴幻覚で少しずつ奇行に走るミンの部屋に魔除け。
ニムはミンの奇行が継承の前兆ではないかと疑う。
Death「デス」:「確信」
ミンの様子を録画で確認したニムはミンに女神が降りてきていることを確信する。
PP1「プロットポイント1(PP1)」:「儀式不可能」
継承の前兆かと思いきや、ミンの自殺未遂で、自殺が原因で悪霊になったマックの仕業だということが予想される。
悪霊を祓い、女神を継承するために動き出す。
F&G「ファン&ゲーム」:「儀式」
マックの慰霊、悪霊退散の儀式など人ならざる者の力を信じる儀式の描写。
Battle「バトル」:「敵意(悪意)」
凶暴化し、ニムや家族に敵意を表す。
B1:儀式の中断後凶暴化・逃走、B2:ニムに継承の真実(母親の悪事)を伝え叔父に性的暴力
B3:飼い犬を茹でて食い、まだ赤ん坊のイトコを抱いて逃走
Pinch1/Sub1「ピンチ1」/「サブ1」:「バヤンへ謝罪」
ミンに女神を継承してほしいとニムに頼む。バヤンを拒んで逃げたことを謝罪する儀式をする。
姉妹の現在。過去への謝罪。2で姉妹の内面が浮き出る。
MP「ミッドポイント」:「悪霊はマックではない」
悪霊はマックだと思ったが、間違いだと儀式を通じて知る。
Reward「リワード」:「復讐心で団結した複数の悪霊」
ヤサンティア家の男とバヤンの巫女を拒んだ女の子供が、ミン。
子孫を呪う悪霊が憑りついている。
Fall start「フォール」:「サンティとの儀式」
悪霊を祓うためにニムと昔なじみのサンティが協力して儀式の準備を始める。
このフォールの場合、MPが負の方向でMAXになっているので希望を見つけた部分をフォールとして分析。
Pinch2/Sub2「ピンチ2」/「サブ2」:「継承の真実」
ノイはバヤンを拒むためにニムが巫女を継承するように動いていた。
姉妹の過去。過去の悪事についての謝罪。1が都合が悪いことを隠していた前置き。
PP2(AisL)「プロットポイント2」:「ニム死亡」
儀式の準備をしていたニムが死んでしまう。
ミンの自殺未遂から始まったPP1はニムの突然死で幕を閉じる。
DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「該当なし」
BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「儀式開始」
悪霊退散の儀式開始。
Twist「ツイスト」:「巫女継承・儀式再開」
サンディが死に、助手らも狂い始める中、ノイが巫女を継承し儀式が再開される。
Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「ミンが廃墟を燃やす」
ノイに油をかけ着火。誰も生き残らない。
Epilog「エピローグ」:「バヤンの存在」
ニムがバヤンの存在を疑う発言をしている。翌日、ニムは突然死する。
Image2「ファイナルイメージ」:「該当なし」
【作品コンセプトや魅力】
女神の依り代になる。精霊などを信じる文化。儀式。
【問題点と改善案】
長い。サンティの儀式からは毛色が変わった感覚なので、サンティを削ってニムのターンを増やした方が違和感がないように思う。
もともとはサンティ部分から本作の構想を練っているとのことなので、もっと前倒しでサンティを活躍させた方が時間を短縮できるかもしれない。
【感想】
「好き」5「作品」5「脚本」3
演出含めてよくここまで盛り込めたなという印象。ホラーの玉手箱。
土着的な恐ろしさやホラー映画ならではの驚かせ、生理的に受け付けない気持ち悪さ、スプラッター。
1回では把握できない文化的な情報の多さにも驚きました。
いろんなホラーを詰め込んでいる分、廃墟でのサンティの儀式からB級ホラー感が強く出てしまっていて、別の作品のように思えてしまった。
謎解明やじっとりとした空気でエンジンかけていたので少し残念です。
分析としては、今回はあえてミンのビートを取りました。
本来なら登場の多さ的にも話的にもミンが主人公でしかるべきと思うんですが、憑りつかれてしまっているのもあってミンの動向に意味を感じ取れず考察頼りになってしまっているのでニム(助ける側)を主人公として取りました。モキュメンタリーの焦点はニム始まりですしね。
ミンの「霊媒の素質があり、継承の前兆が出ているにも関わらず巫女を拒むためにバヤンを入れる隙間がないように悪霊を入れ、バヤンを拒否する」がもうちょっと出ていたらビート取りやすかったのになって思いました。
(雨森れに、2024.3.20)
2024.7.5視聴 イルカ
「好き」3「作品2「脚本」2
モキュメンタリーの演出が致命的に作品を邪魔している。本来リアリティを出すための演出が説明のためだけ(インタビュー)に使われていたり、緊張感あるホラーシーンがカメラマンの介入によって壊されていたり、鑑賞者の集中を邪魔するレベルで失敗している。タイという国の映画のレベルもあるのだろうか。モキュメンタリーか、普通のホラー作品かどちらに寄せるべきだったが、どちらへの寄せ方、見せ方があるが、いずれにせよ脚本から大直しになるだろう。現状はストーリーの核にになっているのが通常ホラー作品なので、こちらで寄せた方がマシだったと思うが、それはそれでホラーシーンのクリシェ感が目立ってくる。オリジナリティに欠ける演出ばかり。「題材」のレベルから考えると、タイの精霊、女神の巫女への継承といったネタに、よくあるが先祖からつづく恨み、犬を食べる文化などが散りばめられているが、それらを、しっかりとアークにまとめたら普通に面白いホラーぐらいにはできた。モキュメンタリー演出は、素人の視聴者は気にしないレベルでも綿密なカメラワークや台詞回しが求められるので、本当はとても難しい。その場合の構成にも気を遣わなくてはならない(参考:映画『 アパートメント 143』:ドキュメンタリータッチの抱える矛盾)が、わからずに使っていても、とにかく「怖いもの」や「気持ち悪いもの」を見せれば、それなりに評価されてしまったりするのも、ホラーというジャンルの善し悪し。