映画『記憶の夜』(三幕構成分析#305)

https://www.netflix.com/title/80223050

※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

【ログライン】

兄を尊敬しているジンソクは、誘拐された兄が戻ってから様子がおかしいことに気が付き、母に打ち明けるも、両親も共謀していると知り逃げ出すが、自分の時間軸がズレていることを知り、今までのことが20年前の殺人事件を聴取するための催眠尋問であると説明を受け、自身が殺人犯だと思い出して遺族に謝罪し自殺する。

【フック/テーマ】
誘拐された兄/忘却は救いか逃避か

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「新居へ」
家族で新居へ向かう。車内で悪夢を見る。
偽りの家族であり、悪夢は拷問を受けた時の断片的な記憶。

GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「ホラーと思わせてミステリー」
予告やあらすじを知らなければ悪夢の内容からホラーを想定してしまう。
全編通して見れば「夢に出てきた男は誰なのか?」に繋がるが、初見では感じられない。
4分頃に業者に「本当にお兄さん?」と聞かれるシーンがあり、そこでミステリー要素を出しているが、それ以降もホラー的演出が出るのでわざとミスリードさせてるように思う。

Premise/CQ「プレミス」/「セントラル・クエスチョン」:「何を疑うのか」

want「主人公のセットアップ」:「優れた兄を尊敬している二浪生」
合格を目指して勉強中。家族と新居に引っ越す。神経症。

Catalyst「カタリスト」:「兄の誘拐」

Debate「ディベート」:「手掛かりなし」
覚えた車のナンバーは存在せず、身代金目的の電話もない。刑事、薬、悪夢の伏線を見せる時間。
主人公が動いておらず葛藤しているわけでもないので、迷いとしての機能は弱い。

Death「デス」:「兄の帰宅」
帰宅し、一旦の事件解決。しかし兄は記憶喪失になっており、誘拐の詳細は不明。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「兄への疑惑」
様子のおかしい兄を疑い始める。疑惑の開始。
ミステリーは認識の変化でビートを拾えるので、今回は「何を疑うようになったか」でビートを区切る。

F&G「ファン&ゲーム」:「謎を追う」
兄への疑惑から謎を追う。緊張感あるシーンが続きMPまでの見どころ。

Battle「バトル」:「尾行」「不信感」
兄の謎行動から尾行に至り、手下とのチェイス、兄に捕まる。
翌朝の揉みあいを経て自分の夢かもしれないと思うが、現実だったという証拠を見つけて、不信感を募らせる。
外的、内的、両方にバトルがある。

MP「ミッドポイント」:「家族への疑惑」
母に兄のことを告白し、協力者を得て解決に進もうとする。しかし、電話の盗み聞きにより母も敵かもしれないと疑惑が生まれる。
電話相手が父だったことにより、家族への疑惑に変化。危険を感じたことから謎の解明ではなく、逃走を図る。

Fall start「フォール」:「20年のズレ」
警察署にて、自分に20年のズレがあることを知る。鏡の中の自分が老いる。
家族ではなく、自分にほころびがある。認識が変化するきっかけ。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「自分への疑惑」
惨殺事件の犯人として催眠尋問を受けていることを知る。
認識の反転。今までの疑惑が誤っていた。オールイズロスト。

DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「逃走」
記憶喪失のため、殺人を受け入れられない。命の危険を感じてその場から逃走。

BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「兄の手術費用」
車に轢かれ、記憶が強制的に蘇る。
兄がICUにいて手術が必要でも国の経済破綻で仕事がない。高額報酬のために殺人依頼を受ける。
真実が明らかになり始める。ビッグバトルのスタート。

Twist「ツイスト」:「計画中止」
怖気づいてしまう。計画を中止しようとする。

Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「謝罪」
殺害対象の母親だけでなく、娘も殺してしまい、依頼主の父親も誤って転落死させてしまう。
真実を思い出し、遺族への謝罪を口にする。ビックバトルの決着。

Epilog「エピローグ」:「自殺」
兄を演じていた遺族、そして主人公自身も自殺。
真実は救いにならなかった。

Image2「ファイナルイメージ」:「20年前の回想」
20年前の記憶。家族と新居へ向かう途中、遺族の少年とその家族に会う。
本物の記憶。

【作品コンセプトや魅力】

記憶反転、どんでん返し、伏線回収、ミステリー、ホラー、スリラー、サスペンス、アクション、韓国映画、ネトフリ配信、チャン・ハンジュン監督・脚本、カン・ハヌル主演

【感想】

「好き」5「作品」5「脚本」3
韓国映画らしいどんでん返しがある作品。
あらすじや予告で認識をズラす話だと予想していましたが、ホラー要素を加えていたので展開が読めなかった。
細かい伏線回収がすばらしく、どこで認識が違ったのかわかると気持ちいい。
一方、人物のセットアップは弱かったように思う。
・主人公が素直過ぎて神経症の説得力がない。文化が違うというのもあるかもしれないが、兄への劣等感を感じられない。二浪してるのに家族もおおらかで愛情あふれている。経済力がある家なのかと思えば、事故で兄の手術費にも困っている……両親は死んでいると判断したが、その場合は保険金があるのでは?困窮するほどか?
・兄だと思っていた人物が実は遺族だったとわかるまでに、警察か殺し屋かわかりにくくしたほうがBFが引き立つのでは。自殺に至るまでのシーンはしっかりと感情を見せて欲しかった
・医師のほうも、なぜ大金を必要だったのか、もう少しふっておかないとわかりにくい。経済破綻だけでは足りない。
このため、ラストのヒューマンドラマとしての見せどころが不発に終わる印象だった。
(雨森れに、2026/8/4)

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