キャラクター概論30「言動決定要素⑤テンション:キャラクターの気分を上下させるもの」

前回に引きつづき、言動決定要素の「テンション」について考えていきます。

【身体へ働きかけでテンションを変える】
「アゲ」「サゲ」という言葉があるように、テンションは上がったり下がったりするものです。
「アゲていこっ!」などと言ったときには、自分の意思で、アルコールを飲んだり、大きな声や体を動かすことで、気分に働きかけることになります。
これは「アゲよう」という意志だけでは直接、気分を変えることはできないことを意味します。
「アゲたい」→「テンションが上がる」ではなく、
「アゲたい」→「行動」→「テンションが上がる」なのです。「上げるための行動」こそがテンションを上げる要因です。

「上げるための行動」の一つは薬物です。アルコール、薬物はもちろん、体調不良の状態から点滴や風邪薬で気分もよくなることもありますし、カフェイン飲料だけでも上がることも体感としてわかるかと思います。
下げるものとしては反対に、酔いが覚める、クスリが切れる、風邪を引く、女性であれば個人差はともかく生理も影響するでしょう。
体調がテンションに影響するとすれば、体調を変化させる要因として気候やケガなどが、間接的に影響しています。月の重力(月の満ち欠け)なども気づかないうちに我々の気分に影響しているかもしれません。

とはいえ、これらの要素は物語で扱うのはデリケートすぎて、ていねいに描かなくてはキャラクターのブレにつながります。
アルコール、薬物のように誰にでも明らかな要因であればストーリーに組み込んでも違和感はありませんが、珈琲を飲んだだけで気持ち悪くなるといった展開は、それ以前にカフェインに極度に弱いという設定を提示しておかなくては、過剰な反応に見えてしまいます。

【精神への働きかけでテンションを変える】
身体ではなく、精神的な要因によってテンションが上がり下がりすることもあります。
「好きな人とうまくいく」「仕事がうまくいく」「宝くじにあたる」
ほとんど誰でもテンションが上がりそうな状況があります。イベントとリアクションの連続で物語は進んでいくものなので「物語とは主人公のテンションを上げ下げさせるもの」と言えてしまう部分もあります。(※主人公が成長変化しない物語であれば、展開の面白さだけでもっていくものがあります)。

たとえば「宝くじで1億円あたった!」→「引換所に行ったら、くじがない! どこかで落としたか?」→「慌てて道を戻ると小さな女の子が拾っている」→「返してもらおうとするが、話を聞くと少女の両親が病気で大金が必要なのだという」……

アゲとサゲの繰り返しで、物語にテンポができてきます。
イベントとリアクションの関係は、キャラクターとプロットをつなぐ鍵にもなります。
それについては次回、お話します。(プロットを考える補足「物語のテンポ(イベントとリアクション)」も参照)

次回……キャラクター概論31「言動決定要素⑤テンション:イベントとリアクション」

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緋片イルカ 2019/09/11

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