映画『ダメ男に復讐する方法』(三幕構成分析#68)

※この分析は「脚本講習」の参加者によるものです。

※あらすじはリンク先でご覧下さい。
https://amzn.to/3fBwwsB

【ログライン】

カーリー⇒自分が結婚を考えていた男(マーク)の愛人だったと知ったカーリーはマークから離れる決断をする。しかし、マークの妻のケイトから執着され、次第に打ち解け仲良くなる。そして、マークへの復讐をケイトに頼まれ、アンバー(マークの2人目の浮気相手)も含めた三人で協力し、復讐を実行する話。
ケイト⇒信じていた夫(マーク)に裏切られたケイトは、第一愛人のカーリーと第二愛人のアンバーと仲良くなり、2人と協力してマークへ復讐する話。

【ビートシート】


Image1「オープニングイメージ」:「カーリーとマークのデートシーン」2人のデートシーンがいくつか出てきます。

CC「主人公のセットアップ」:「弁護士事務所に出社」出社するシーンです。助手とのやり取りでマークとの結婚を考えていることが分かります。
「ジャンルのセットアップ」

Catalyst「カタリスト」:「マークの自宅へ行く」父親にマークとの喧嘩を伝えると自宅へ行くよう言われ、押しかけるところです。ケイトと出会うという意味でカタリストだと考えました。

Death「デス」:「マークに妻がいた」玄関に出てきたのが家政婦だと思っていたら、奥さんだったというシーンです。結婚したいと思っていた男に妻がいたら、どん底…デスだと考えました。ただ、PP1に入るのを決めるデスとは違うのかな…と思います。(ディベートとデスが逆になってしまったので、違うかもしれません)

Debate「ディベート」:「ケイトを追い返そうとする」ケイトと距離を取りたいカーリーと話したいケイトとのやり取りです。家に招き入れる部分をPP1と考えたので、その前の悩んでいるシーンはディベートと考えました。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「ケイトを家に入れる」ケイトと仲良くなることから復讐へつながるので、PP1と考えました。

Battle「バトル」:「ケイトとの尾行」「マークへの復讐」ケイトと一緒にマークの尾行をして、第二の愛人を見つける部分とマークへの復讐部分がバトルだと考えました。

Pinch1「ピンチ1」:「」

MP「ミッドポイント」:「自分が悪く言われていたと知る」MPは正直悩みました。カーリーで考えるとよく分からなかったので、MPはケイトが踏んだと考えて、第二の愛人アンバーから、マークが自分(ケイト)を悪く言っていたと聞かされるシーンにしました。ケイトを中心に考えると、ここまでは落ちていくアークでこのシーンで落ちきるので、MPとしました。

Fall start「フォール」:「3人で協力して復讐することを決める」ケイトのマークへ復讐したいという発言から、3人で協力して復讐することが決まるシーン。ケイトのアークで(上がっていく)フォールが始まると考えました。

Pinch2「ピンチ2」:「」

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「結婚指輪を捨てる」割合としては遅いのですが、この前のシーンで「私たちの旅は終わりね」という発言もあり、第二幕が終わったと考えました。また、ケイトで考えると、それまではマークとの関係を悩んでいましたが、結婚指輪を捨て次のステージへ進んでいくと感じたので、PP2の始まりとしました。

DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「」

BBビッグバトル:「マークの詐欺を暴く」マークを懲らしめる一番大きな復讐です。

image2「ファイナルイメージ」:「ケイトの弟と付き合い妊娠(カーリー)・仕事を始める(ケイト)」

エピローグ:

【感想】

ケイト役のレスリー・マンが最高に面白い映画でした。キャメロン主演と書いてあったので、カーリーでビートを取っていましたが、ケイトで取った方がスムーズだったかなと書いていて思いました。(現にMPからはケイトで考えてしまいました。ブレてしまったかもしれません)
まだバディもののビートは難しいので練習していきたいと思いました。

(米俵、2022.10.2)

SNSシェア

フォローする

『映画『ダメ男に復讐する方法』(三幕構成分析#68)』へのコメント

  1. 名前:川尻佳司 投稿日:2022/10/06(木) 22:48:35 ID:d945301d4 返信

    ご指摘の通りケイトの素直で調子はずれの言動が面白く、感情移入させるラブコメ復讐劇でした。ビートもケイトのキャラクターアークに影響される部分が大きかったですね。
    細かいビートについては復讐劇のプロットとして捉えていくと、カタリストが9分たったところのマークの突然のキャンセル。ディベートがそこからデスのケイトがりつけられたとすねて帰りそうになるところまで。そしてPP1でケイトを家に入れる。ピンチ1で別の愛人の電話を聞き、MPでアンバーと出会い、フォールがマークがケイトを悪者扱いしていたと知るところ。ピンチ2で父親から隠し口座の話を聞き、defeatでケイトがマークとよりを戻しそうなる。PP2は82分たったところの復讐が一度とん挫するカーリーとケイトの絶交、DNはそこからカーリーとフィンの食事、ケイトとマークのサインのやりとり、そしてTP2がカーリーがケイトのサインを見てもう一度復讐を決意するところ。Prepareがそこから結婚指輪を投げ、銀行に行くまで、そしてstartで弁護士事務所にマークを呼び出す。twistはあえていうならマークがケイトのサインで脅すところ。というのもあるかと思いました。

    • 名前:米俵 投稿日:2022/10/07(金) 18:40:55 ID:06c4a0bd1 返信

      川尻さん、ありがとうございます。
      自分でもブレブレだなと思っていたので、助かりました。
      川尻さんの考え方でいくと納得できました!ありがとうございます^^

  2. 名前:緋片 イルカ 投稿日:2022/10/10(月) 04:54:39 ID:c71b56836 返信

    すべてカーリーでとれます。

    カタリスト:玄関でケイトと会う(12分11%)

    PP1:ケイトを部屋に入れる(27分26%)

    MP:三人で飲んで騒ぐ(61分58%)

    フォール:仕返し作戦開始(64分61%)

    PP2:ケイトが去る(83分79%)

    上記の重要ビートはほぼ確定(他の候補はない)と思います。同じシーン内で「言い方が違うだけ」などは、同じと思っていただいて問題ないです。解説はあえて入れませんので、意義は考えていただけたら。

    ピンチ1は難しいので解説します。

    ピンチ1はサブプロットに関するものです。候補としては「カーリーの父」か「ケイトの弟」が有力です。サブプロットは一つとは限らないので、群像的に何本もある場合もありますが、この作品ではシンプルに「ケイトの弟」で良いと思います。

    判断の根拠としては、メインプロットが「カーリーとケイトのバディプロット」に対して、弟くんは「姉さんは良い奴なんだ」と観客にケイトの違った見方を提供しています。メインプロットを補うものがサブプロットのひとつの考え方です。

    もうひとつの考え方は、単純に「ラブインタレスト」(恋人)の役割です。初登場のシーンから予感できるほどで、言うまでもありません。

    それから、サブプロットに関わるようなサブキャラは、アクト2に入ってから登場します。これは「旅先で出会う人」という意義があり、旅立つ前(アクト1)では登場しません。「カーリーの父」は前半で登場しています。形式的ですが、判断の目安にはなります(※これだけで決まる訳じゃない)。

    ピンチ1で「ケイトの弟と会う」(35分33%)のあと、MPで彼の家に行き、よい雰囲気になります。一連のどこでとっても良いぐらいですが、「私ならここにテーブルをおいて珈琲を飲む」(59分56%)が妥当かと思います。これを「クロスオーバー」といいます。ピンチ1、クロスオーバー、ピンチ2は3点セットのように捉えてください。

    すると、ピンチ2は「ケイトの弟と食事」(83分79%)となりそうですが、これは川尻さんもご指摘のとおり「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」の位置にあります。

    その次のシーンで、ケイトに対して「バハマ行きを断る」というツイストがありますが(ちなみにケイトから見たPP2にあたる)、このときのカーリーの行けない理由が「次の恋に進みたいから」といったもので、この作品中で一番、違和感のあるセリフでした。これは妥当なピンチ2の位置に「弟との食事」シーンを置かなかったことが原因になっていると感じます。ビートが機能していないのです。ピンチ2で弟と食事をさせた上で、もう一度、「弟からデートの誘い」のシーンを入れておけば、すんなりと「バハマ行きを断る」理由にできたはずです。

    前にもお話しましたが、ハリウッドではピンチをビートとしてとらえていないため、このようにキャラクターアークが崩れることが多々あります(これがハリウッド式のビートシートの限界だと僕は思っています)。

    もう一つピンチ1と呼べそうなのは3人目の女性アンバーに関するもの。
    「アンバー登場」(55分52%)=ピンチ1
    「三人で飲んで騒ぐ」(61分58%)=クロスオーバー=MP
    「アンバーがジャンケンに勝つ」(75分71%)=ピンチ2

    2本目のサブプロットと呼んで良いですが、アンバーはケイトに関するサブプロットという印象。分析のときには「ケイトの弟」と「アンバー」の両方、抑えても構いません(丁寧な分析になるだけ)。

    アクト3に関しては、脚本上の「ビッグバトル」の目的が「銀行を突きとめること」しかないため、音楽と映像で、引っぱっているシーンが多いという印象でした。作品上、スリリングな展開などは必要なさそうな雰囲気で、葛藤が弱いこと自体は許せても、ややクリシェなシーンに時間を使いすぎているという印象を受けました。綺麗なだけのシーンより、この作品らしいユニークなシーンを入れられたのではないかと、ちょっと残念です。

    ケイトのキャラクターについての面白さは皆さんに同感で、これだけでも見る価値があると思いますが、敵役であるケイトの夫を、徹底的に悪者にして感情移入させないようにしつつ、ラストでボコボコにされても可哀想と思わないようなコメディな演出で、笑いに転化しているところも注目しておきたいところです。一歩、間違えると、観客に「主人公達、やりすぎ」と思われたら、笑えないしスカッともできません。そのバランスはとてもよく出来ていると感じました。

    ※米俵さんへの補足
    ・「ディベート」と「デス」がひっくり返ることは絶対にありませんので、ご注意ください。

    ・「バディもの」と「バディプロット」という言葉は違うので、区別できるよう目指してください、この作品は「バディプロット」です。そもそも「愛人と妻でバディプロットをやろう」というところに、この作品の企画のフックがあります。
    参考記事:「三幕構成と恋愛(プロットタイプとストーリータイプの違い)」(三幕構成25)

    川尻さんへの補足
    ・「復讐劇のプロットと捉える」と書かれていますが、その作品が「何をテーマにしているか?」はアクト2の主人公の行動で決まると考えてみてください。この作品では、イクスターナルとして明らかに「復讐する」というアークがありますが、それがメインではありません。たとえば、この作品を見たことない人に紹介するとき「3人の女性が復讐をする話」と「愛人と妻が仲良くなっていく話」と伝えたとき、どちらが作品の印象に近いか考えてみてください。どちらも「あらすじ」としては間違いではありませんが、作品の雰囲気を的確に伝えているのはどちらかです。これはアクト2の主人公の行動で決まるのです。たとえ、作り手や宣伝マンが、違う言い方をしていても、映画を見た人の印象は「非日常の世界に入ったアクト2の印象が強くなります」。また、「復讐作戦」が始まるのはMP以降です。つまり3人の女性が仲良くなった後であり、MPまでは仲良くなっていく過程なのです。3人は最初から復讐だけを目的に仲良くなったのではないのは、シーンの雰囲気を見れば明らかです。「復讐する」という共通の目的が彼女たちを結び付けているのは事実であり、表面的にはストーリーを動かしている重要な要素なので、きちんと拾うべきところなので、間違いなどではありません。ただ「復讐劇のプロット」としてとるならば、徹底して「復讐劇」でとるようにしてみてください。その場合、復讐を開始した地点がPP1となるはずで「ケイトを部屋に入れた」にはならないはずです(カーリーはケイトを復讐に利用するために入れたわけではありません)。そして「復讐劇」で徹底して、とってみると、大きくズレていることが見えてくるはずです。そこから「ああ、これは復讐劇ではないな」と理解できるのです。客観的に分析するというのは、こういう感覚です。川尻さんは基本が出来てきているので、もう一歩、上のレベルでの分析を目指されるとよろしいかと思います。

  3. 名前:牛込 投稿日:2024/01/02(火) 08:48:13 ID:e2dc05fcd 返信

    初めまして。
    突然の質問を失礼いたします。

    新年おめでとうございます。
    こちらのサイトで勉強させていただいている者です。

    コメント欄でイルカ様が解説されておりました「クロスオーバー」についてお聞きしたいことがあり、コメントさせていただきました。

    1点目、クロスオーバーの基本についてですが…

    (構成)
    ・ピンチ1:サブキャラと出会う
    ・MP:サブキャラを含んだMP
    ・ピンチ2:サブプロットの進展

    (特徴)
    MPでメインプロットとサブキャラ=サブプロットが合流するパターン

    という認識で合っておりますでしょうか?

    通常、サブキャラに関するものはピンチ1・ピンチ2のところ、クロスオーバーではMPでも交わっているという点に特徴があるのかな…と考えていたのですが、どこか表面的な気もしています。

    2点目、クロスオーバーの意義・効果について…

    こちらはざっくりとした質問になってしまい申し訳ないのですが、「クロスオーバー」の意義というか、特徴的な効果などございますでしょうか?

    該当映画では、act1における主人公のキャラクターアークに関するものは

    ・want:敵(バディの旦那)の父に会いたい=結婚したい
    ・主人公は不倫相手だった

    上記2点で、以降のact2からは「バディのために動く」という展開が続いている印象で、バディの内面や葛藤を取り上げるシーンは見られるものの、主人公の内面をメインとしたシーンは少ないように感じました。

    なので、クロスオーバーでは「ピンチ1・MP・ピンチ2」と3回、たたみかけるように主人公の内面に関係するサブキャラのシーンを入れることによって、それまで足りなかった主人公のキャラクターアークを描写できる…という効果があるのかなと考えましたが、

    イルカ様のご解説では、

    ====コメント欄より引用====
    もう一つピンチ1と呼べそうなのは3人目の女性アンバーに関するもの。
    「アンバー登場」(55分52%)=ピンチ1
    「三人で飲んで騒ぐ」(61分58%)=クロスオーバー=MP
    「アンバーがジャンケンに勝つ」(75分71%)=ピンチ2
    =================

    別キャラに関しても「クロスオーバー」として解説されておりましたので、私の考えた「サブキャラを絡ませて足りないシーンを補う」という効果は検討外れな気がします。

    何か、「クロスオーバー」に特徴的な効果・意義・使用上のポイントのようなものがございましたら、お教えいただけますと幸いです。

    かなり前にご解説されている映画に、急に質問してしまい大変申し訳ございません。
    新年早々に大変恐縮ですが、お休み明けのご都合の良いタイミングで大丈夫ですのでお返事いただけますと幸いです。

    何卒、よろしくお願いいたします。

    (こちらの内容が上級編に当たる場合はスルーしていただいて問題ございません。)

    • 名前:緋片 イルカ 投稿日:2024/01/03(水) 02:51:50 ID:4bbe01225 返信

      牛込さん、コメントありがとうございます。

      自分で書いたことでも、時間が経つと忘れてたり考え方が変わってたり、映画の細かいシーンも忘れてしまうことが多いので、今の時点での回答として返信させていただきますね。

      ちなみに当サイトに限らず、ハリウッド系の本でも、書いている人によって用語の定義や、用語そのものも違ったりするので、数学のような100%の解答はどこにもありません。自分が使いやすいものや、ピンとくるものを応用して、創作に活かしていくしかないと思います。当サイトの記事は、その時点で僕自身が有効だと思うものをまとめているだけですし、今後も良いと思うものがあればアップデートもしていきます。その前提でお読みください。

      ビートは、表面的(あるいは演出的な)リズムとして、とりあえず入れるだけでも、ある程度の効果があります。ホラーやアクションのような映画をイメージをしてもらえると想像しやすいかと思いますが、感動はしないけれど飽きない作りにできるというかんじです。原理としては「数分に一回は変化が起きる」程度のことです。こういう意味合いでのビートを便宜上「プロットアーク」と呼んでいます(造語です)。

      一方で、キャラクターの内面や成長などをビートにして描いた場合は一般的に「キャラクターアーク」と呼ばれるものになります。ハリウッド系の脚本論では「キャラクターアーク」だけでビートでとろうとすることが多く、解釈や定義も強引になっていることが多いと感じたので、当サイトでは中級編以降の記事では「プロットアーク」と「キャラクターアーク」を分けて考えるようにしています。

      「クロスオーバー」というビートも僕の造語で、他のハリウッド系の本には出てきません。主に「プロットアーク」に関するもので、最初に作ったときの定義としては「サブキャラクターがMP付近で出てくる」程度の意味しかありません。分析しているうちに、そうなっている映画が多いと気づいたために「クロスオーバー」という名前をつけました(交差という意味から名づけただけ)。

      分析では何か気付いたら「仮に設定」して、別の作品に同じビートが「あるか?ないか?」「あるなら効果的か?」などを検証していきます。

      現在の僕の感触では「クロスオーバー」は効果的だが必須ではない印象はないです。原理としては、MPでは盛りあげるために「派手なシーン」や「賑やかなシーン」が多い(例えばパーティーとか決戦とか)ため、サブプロットのキャラクターも含めて、大勢のキャラクターが集まると単純に盛り上がるという効果があります。創作するときの発想でいえば、逆にMPを盛りあげるために「あえて集める」という考え方ができます。

      主人公のメインストーリーに対して、サブプロットがあまりに別の時間、別の場所で展開されていると、群像劇のようにバラバラになってしまったり、サブプロットが長くなるとメインストーリーの展開を遅めたりしますので、ほどほどのタイミングで絡ませる必要があります。そのタイミングとして「MP」や「ビッグバトル」はやりやすいです。

      牛込さんのおっしゃる「MPでメインプロットとサブキャラ=サブプロットが合流するパターン」という認識で合っていると思います。「サブキャラに関するものはピンチ1・ピンチ2のところ、クロスオーバーではMPでも交わっている」という特徴もその通りですし「表面的な気がする」というのも「プロットアーク」に関するものなので、そう見えるのも当然だと思います。「プロットアーク」だけだと表面的になるし、「キャラクターアーク」だけだとメリハリがなくなったりします。企画によって、どこで、誰に向けて作品を出すのかでバランスは整える必要があります。エンタメよりならプロットアークをしっかり固めた方が多くの人が見やすくなるし、アート的なミニプロット系であればしっかりとキャラクターを掘り下げた方がよかったり、ケースバイケースです(作品はひとつとして同じものはないので)。

      「2点目。クロスオーバーの意義・効果について」は、上記で説明した程度のことでしかないのですが、ご質問いただいたことで「キャラクターアーク」にとっての「クロスオーバー」と考えたら、何か深い意味をつけられるかもしれないと感じました。今の時点で答えはないですが、たぶん「サブプロットとは何か?」という根本的なことに関わりそうなので、難しそうですが、面白そうだと思いました。何か気付いたり、考えがまとまったら、また新しい記事にしたいと思います。

      ちなみに、ほとんどの映画の「サブプロット」は、そこまで深い意義をもってないです。「サブプロットがいい作品って何?」と言われてもパッと浮かばないぐらいです。たいていは主人公とは別のサブキャラクターの話か、主人公の恋愛とかプライベートの話程度です。そういうサブプロットが必須かというと、疑問なものも多いです。企画やキャスティングの都合や、ストーリーの味付けのために入っているだけと感じるものも多いですが、楽しいことも多いので無駄とは言い切れない気がします。なかったら、寂しいな~というかんじで。ジャンルとかキャラクターによるので、何をもって「良いサブプロット」とするのかも難しいですね。「サブキャラクター」自体が魅力的に見えるものはたくさんありますが、メインプロットとの相乗効果が生まれているようなものは「良いサブプロット」と言えるのかもしれませんね。牛込さんのおっしゃる「「ピンチ1・MP・ピンチ2」と3回、たたみかけるように主人公の内面に関係するサブキャラのシーンを入れることによって、それまで足りなかった主人公のキャラクターアークを描写できる」というのが効果的にできていれば、良いサブプロットの一つだとも感じます。

      以上、長文にて失礼しました。「クロスオーバー」に関して、深読みしていただくほどには、僕が考えていないのがお分かりかと思いますが、ご自身で良い方法や定義など見つかりましたら、ぜひ教えてください。

      なお、この記事より後で、分析会で話をする中で「ピンチ」については考えはアップデートされておりますので、よかったらご参考になさってください。
      「ピンチ」再定義・呼称変更(中級編22)

  4. 名前:牛込 投稿日:2024/01/08(月) 04:20:39 ID:c7e29c653 返信

    # イルカに返信

    先日は新年早々にも関わらず迅速にお返事いただき誠に感謝いたします。

    諸々のご解説や参考記事のご紹介をありがとうございました。
    「クロスオーバー」について、とても理解が深まりました。

    特に効果についてのご解説はすごく腑に落ちまして…他のバディプロットの映画を分析していたのですが、本記事の映画とは異なり、act2からfallまでバディ2人中心の構成で、バトルも段階的に上がっていく感じが演出的に弱かったためMPはどこだろうと悩みました。

    一応、主人公がバディと酒を飲みながら初めて自身の過去を打ち明けるシーンがあったため、その辺りをMPとしたのですが、演出的に決めたというよりはバディプロットのパターンとしてMPと判断した感じが強く…

    そう考えると、確かに、作品の雰囲気によってはサブキャラを含めて人数を増やした方が視覚的・演出的にもMPが分かりやすく盛り上がるなと実感しました。

    また、「サブプロットとメインプロットの時間的・空間的な乖離」「サブプロットによるメインプロットの展開遅延」を防ぐ、という効果も盲点でした。

    時々、創作術の本などで「色んな要素を同時に盛り込んでテンポよくシーン展開を進める」的な心掛けというかテクニックの説明を見かけ、言ってることは分かるのですが、いまいち自分の中に落とし込めておらず…

    私の創作脳的にも、サブキャラ=サブプロット、メインキャラ=メインプロットと無意識に凝り固まっていたところがあり、創作の際にサブが膨らんで間延び感が出てしまったり、サブを組み込んだ感が出てしまうようなメインとの断絶感があり悩んでおりましたので、絡めるタイミングの一つの選択肢として知れて良かったです。

    たくさん勉強になりました。

    私自身でもサブプロットやクロスオーバーについて気づきがありましたら、またコメントさせていただきます。

    この度は丁寧で詳しいご解説を本当にありがとうございました。

    (約1年前からこちらのサイトで勉強させていただいて…今回、お返事いただいてとても感激でした!!これからも陰ながら応援しております。)

    • 名前:緋片 イルカ 投稿日:2024/01/08(月) 22:39:31 ID:53234e5f3 返信

      ご丁寧なお返事ありがとうございます。少しでも参考になりましたら幸いです。

      創作術の「色んな要素を同時に盛り込んでテンポよくシーン展開を進める」というのは「言うは易し、書くは難し」ですよね笑

      1年もご覧いただき嬉しく思います。個人サイトゆえ、不定期更新で思いつきで書いた記事も多くありますが、気が向いたときにでも、ご覧いただけましたら幸いです。

      なお、必要以上に勧誘する気は全くありませんが、月一で開催している「物語分析会」では集まったメンバーで「ああじゃないか、こうじゃないか」と日々研鑽しております。創作に取り組まれている方の参加を大歓迎ですので、ご機会ありましたら。いつか、牛込さんにお話できる日がありましたら嬉しく思います。