ドラマ『ブラック・ミラー』シーズン4(三幕構成分析#105)

分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

上級編の内容を含みますが解説はしません。
作品情報はWikipediaより。

【ビートシート】

“宇宙船カリスター号” “USS Callister”

監督:Toby Haynes
脚本:Charlie Brooker, William Bridges
公開:2017年12月29日
キャスト: ジェシー・プレモンス、クリスティン・ミリオティ、ジミ・シンプソン、ミカエラ・コーエル、ビリー・マグヌッセン

●スリーポインツ
「カタリスト」:「スペースフリーク開始」(12分16%)
PP1:「ナネットがスペースフリークへ」(20分27%)
MP:「仲間がモンスターに=デイリーには逆らえない」(43分57%)
フォール:「ワームホール発見」(44分59%)
PP2:「ワームホール作戦開始」(52分69%)

●ヴォルテクス(RP2-UU型)
カタリスト:スペースフリークの世界へ
PP1:反逆開始(現実のナネットへメール)
MP:ワームホール到着
フォール:オンラインで新しい船長として

●感想・解説
「好き」3点 「作品」4点 「脚本」3点
レトロSFの演出、雰囲気の面白味はある。ゲーム世界での独裁という設定も面白いがシーズン2のホワイトクリスマスのアレンジではある。演出に寄りすぎていて、テーマやドラマの掘り下げは浅い。エミー賞は懐古趣味へよるものか。設定上のツッコミどころも多い(デイリーはプログラマーならスペースフリーク内で戦う必要はないとか根本的)。主人公をスイッチさせてるが構成ミス。効果的でない。ツイストも少なくナネットの作戦通り、段取り的に進む。ピザとか部屋侵入もクリシェ過ぎる。共同経営者が謝る(ゲーム内で)流れは良いが、全体から浮いている。

“アークエンジェル” “Arkangel”

監督:ジョディ・フォスター
脚本:Charlie Brooker
公開:2017年12月29日
キャスト: ローズマリー・デウィット、ブレンナ・ハーディング、オーウェン・ティーグ

●スリーポインツ
「カタリスト」:「娘にインプラント」(6分12%)
PP1:「成長1(ブランコシーン)」(14分28%)
MP:「端末をしまう」(23分45%)
フォール:「再び端末を見る」(29分58%)
PP2:「娘の恋人に別れろ」(37分74%)

●ヴォルテクス(RP1-D型)
カタリスト:娘が行方不明
PP1:娘にインプラント

●感想・解説
「好き」5点 「作品」3点 「脚本」3点
娘にインプラントを施し監視する過保護・過干渉の母との関係という題材がとても良い。設定から容易に想像されるのクリシェなイベントばかり(娘の不良化とか)でドラマとしてチープ。娘の成長が演出上はリズムになっているがストーリーとしての掘り下げには全くなっていないため、ものすごくもったいない。きちんと処理すれば名作になった可能性が高い。素晴らしいショットがいくつかある。演出は良い。

“クロコダイル” “Crocodile”

監督:ジョン・ヒルコート
脚本:Charlie Brooker
公開:2017年12月29日
キャスト: アンドレア・ライズボロー、キラン・ソニア・サワル、アンドリュー・ガワー、アンソニー・ウェルシュ、クレア・ラッシュブルック

●スリーポインツ
「カタリスト」:「数年後」(5分%)
PP1:「ミアが男を殺す」(14分%)
MP:「保険屋がミアを特定」(35分%)
フォール:「保険屋がミアの家へ出発」(36分%)
PP2:「記憶を見られる」(42分%)

●ヴォルテクス(RP3-UDD型)
PP1:保険屋がピザの調査開始
MP:保険屋がミアを特定
フォール:保険屋がミアの家へ
PP2:保険屋がミアの記憶を見る
ビッグバトル:保険屋一家がミアに殺される

●感想・解説
「好き」3点 「作品」2点 「脚本」3点
ジャンルとしてはサスペンス。ミアという主人公は「過去の罪から連続殺人を犯してしまう」という設定上の描かれ方以上のキャラクターが見えず、ドラマは弱い。ラストの子供を見て涙するシーンに全く共感できない。探偵役の保険屋がいて、倒叙型サスペンス・ミステリーにあてはまるが、保険屋の動き出しが遅いし、別件を追っているせいで緊迫感がない。ミアの隠蔽工作などもクリシェ。記憶を見るという装置をサスペンスに入れ込んだことが企画としてのオリジナリティだが、これもシーズン1『人生の軌跡のすべて』の焼き回し感。あっちのが工夫も緊迫感もあった。せめて「赤ん坊が盲目」「モルモットからも記憶がとれる」といった設定をきちんとセットアップ/ペイオフすれば、ツイストが効いていたが、それもとってつけたような後付け。

“HANG THE DJ” “Hang the DJ”

監督:ティモシー・ヴァン・パタン
脚本:Charlie Brooker
公開:2017年12月29日
キャスト: ジョージナ・キャンベル、ジョー・コール

●スリーポインツ
「カタリスト」:「男女出会い」(2分3%)
PP1:「男女別れ」(10分20%)
MP:「システムについての会話」(32分63%)※二人が再マッチングしてからの最高潮となるMPらしいシーンが欠けている。
フォール:「残り時間を見る」(35分68%)
PP2:「男女別れ」(39分77%)

●ヴォルテクス(RP3-UDU型)
カタリスト:男女別れ
PP1:再マッチング
MP:二人の絶頂シーンなし
フォール:残り時間を見てしまう
PP2:男女別れ

●感想・解説
「好き」5点 「作品」3点 「脚本」2点
「システム」に対抗して愛を貫くラブストーリーという題材は魅力的。個人的にも最初数分で期待が持てる。これは前2作『アークエンジェル』『クロコダイル』でも同様だったが、アクト2で非日常に入ってから、テーマを掘り下げるということができないライターらしく、ストーリーが説明的なクリシェから(恋愛シーンがセックスばかりでうんざりする)、極端な方向転換をするクセがある。実は「トゥルーマンショー」「シミュレーション世界でした」のオチも、それを使うこと自体が悪いというより、ラブストーリーとしての魅力的になりそうなドラマ展開を放棄して落とすようなものではない。シリーズを通してみるとネタギレ感も出ている。唐突な設定後出しがあるが、シミュレーション世界だからという理屈で片付けるには、観客の気持ちを無視しすぎている。「壁」や「システム」に頼るセットアップが足りていないので、ただのマッチングサービスのように見えて、従いすぎるところなどにも違和感。「99.8%」にしたため、抵抗したもう1組は誰だったのか、変な疑問を残している。ヴォルテクスとしては、二人が再会してからの方が本題であるのに、離れている期間はディベートに過ぎない、他の男とのシーンをいつまで見せられるんだ?という気分になる。致命的な構成ミス。アクト2の「お楽しみ」が全然ないようなもの。

“メタルヘッド” “Metalhead”

監督:デヴィッド・スレイド
脚本:Charlie Brooker
公開:2017年12月29日
キャスト: マキシン・ピーク

●スリーポインツ
「カタリスト」:「犬に遭遇」(6分15%)
PP1:「無線。1対1の逃亡開始」(14分35%)
MP:「樹上から逃亡」(22分56%)
フォール:「屋敷侵入」(25分63%)
PP2:「犬が迫る」(31分75%)

●ヴォルテクス(RP1-D型)
PP1:逃亡開始
MP:自殺決意

●感想・解説
「好き」3点 「作品」2点 「脚本」2点
『宇宙船カリスター号』と同等のジャンル嗜好の薄い作品。荒廃した世界もののホラーやアクションの雰囲気出しつつ、アクションやサスペンスとしての緊張感もないまま、とってつけたような設定上のドラマ。B級映画感が出てしまっている。命がけで欲しかったものが「クマの人形でした」をオチとするなら、しっかりとセットアップして、エンジンをかけておくところ。脚本の大切さがよくわかる作品。説明的セリフのオンパレードで、「説明的とはどういうことか」という悪い見本になる。シーンを同じままでも、セリフやシーンのちょっとした工夫でテーマを滲み出せる。「犬」の設定ももう少し欲しい。デザインや世界観にも、もう一ひねり欲しい。

“ブラック・ミュージアム” “Black Museum”

監督:Colm McCarthy
脚本:Charlie Brooker
公開:2017年12月29日
キャスト: ダグラス・ホッジ、レティーシャ・ライト

※分析表のみ。

●感想・解説
「好き」5点 「作品」4点 「脚本」4点

シーズン2『ホワイトクリスマス』と同様のマルチプロット回想型の構成。ネタも似ている。モノローグに合わせて回想していく形なので、ライターであるCharlie Brookerの弱点であるシーンの弱さ(クリシェイベントの多さ、陳腐なセリフなど)が隠れている。20分程度のショートストーリーなのでテンポもだれず、設定や展開自体は面白い。気になる点は多々残る(ぬいぐるみに移植できるなら、父を移植することも出来たのでは?とか。母親が移植されていることにフリがないとか)。空調をおかしくしていたというフリとオチも「ゴミ捨てだけじゃなかった」というショット的の面白味だけで、ストーリーとしては効いていない。「一体、どうやって水=毒を飲ませるんだ?」といったミステリーエンジンを起動させて、初めて「実はすでに仕込んでいた」というのが効いてくる。2つめの話、ぬいぐるみは母が移植されていることで一応の回収になっているが、1つめの話がラストのどこにもつながっていない。たとえば、館長も快楽主義で苦しめることができないが、別の方法で苦しめて殺すといったツイストが効いてくれば、すべての話が繋がって、見事な回収になるのだが、そういうツメの甘さも残る。ラストの爽やかさは、グランドハウスのような小気味良さがあって好感。シーズン4は全体的に脚本の質が悪い気がする。過去シリーズと同じような設定も多く、ネタ切れか、演出の派手さで誤魔化している作品も多い。シーズン1の頃の尖り方がない。

緋片イルカ 2023.1.3

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