映画『ハローゴースト』(三幕構成分析#187)

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※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

※この分析は「ライターズルーム」メンバーによるものです。

【ログライン】

自殺願望の強い孤児のカン・サンマンは、4人の幽霊に取り憑かれ成仏させるため願いを叶える中で、家族の愛に気づき家族を作って生きていく決意をする。

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「睡眠薬を大量に口に含む男」涙を流しながら睡眠薬を大量に口に含むサンマンの映像がトップシーン。児童養護施設で暮らした悲しい日々と人生に疲れている日常がモノローグで語られる。その後、電話がかかってきて口から一気に薬を噴き出すシーンでコメディ映画であることを示唆。

GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「コメディ」

Premise「プレミス」:「自殺したかったサンマンは4人の幽霊に取り憑かれ、彼らの願いを叶えようとする」

want「主人公のセットアップ」:「思い通りに死ぬことができない」人生に疲れ自殺を繰り返すが思うように死ねないサンマン。「思い通り死ねない人生だ」

Catalyst「カタリスト」:「4人の幽霊に体をつかわせて欲しいと言われる」精神科病棟に入院したサンマン。不審な挙動から頭がおかしいと思われるが、実は彼には幽霊が見えていた。サンマンは4人の幽霊に体をつかわせて欲しいと言われる。幽霊との接触点がカタリスト。

Debate「ディベート」:「4人の幽霊に取り憑かれる」サンマンは4人の幽霊に取り憑かれた状態で日常生活を送ることになる。孤児院出身で、今まで感情を閉じ込めて生きてきた彼だが、幽霊に取り憑かれたことで少しづつ変わっていく。年齢性別様々な幽霊たちに憑依されることにより彼らの性質が自分に現れてしまうからだ。それは半強制的で、外的な要素からくる変化で、まだ真の内的な変化ではない。

Death「デス」:「幽霊を成仏させようとする」幽霊がいるため部屋が凍りつき、指を怪我してしまうサンマン。幽霊を4人も養えないと考えたサンマンは、幽霊を成仏させようと霊媒師にすがるができず、逆に願いを叶えてやれと言われる。幽霊を養うというサンマンの思考は面白く独特。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「4人の幽霊の願いを叶えてあげることに」サンマンは4人の幽霊の無念を叶えてあげることに。彼が出した条件は、それぞれが自分の願いを叶えるためには自分の足で歩くこと。サンマンに取り憑いた状態では彼の体が持たないため。自己犠牲精神に欠ける部分あり。自殺願望者の孤独な日常が変化していく点がPP1。

F&G「ファン&ゲーム」:「」不明

Battle「バトル」:「おじいさんの無念を晴らす」サンマンは一人目のおじいさん幽霊の無念をはらしにいく。彼は持っていたカメラを警察に盗まれたらしい。一般人が警察を追い回すというシーンはシュール。

Pinch1/Sub1「ピンチ1」/「サブ1」:「小僧の願い」アニメが見たいという小僧幽霊の願いを叶えるサンマン。そのために訪れた映画館で、子供を連れたヨンスとで再会。小僧幽霊に乗り移られ奇妙な行動をとるサンマンだが、ヨンスの連れている子供に好かれ、結果的に彼女との距離を縮める。

MP「ミッドポイント」:「タバコの男と車で海に行く」車で海に行きたいというタバコの男幽霊の願いを叶えるために、タクシーに乗って海に行くサンマン。そこで初めての海水浴を経験する。またMPでヨンスとサンマンは互いの名前を知り合う。

Reward「リワード」:「サンマンの思考変化」サンマンは4人の幽霊との暮らしの中で、誰かと暮らすことを楽しいと感じ始める。

Fall start「フォール」:「無免許運転で捕まる」サンマンは免許を持っておらず、無免許運転で捕まってしまう。幼い頃から車が怖くて免許を取らなかったというサンマン。この点もラストの伏線の一つ。

Pinch2/Sub2「ピンチ2」/「サブ2」:「ヨンスが身元引き受け人になる」身元引き受け人としてヨンスが警察に来てくれる。そこで、サンマンの独り言をきいたことから家族がいないことを知るヨンス。サンマンの胸に耳を近づけヨンス、これは看護婦のヨンスの癖のような行動だが、物理的にも二人の距離が近づく。家族を捨てたかったというヨンス。サンマンとの立場の違いが明確に。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「最後の一人の願い」最後の一人の泣き虫幽霊の願いは好きな人たちのために料理を作ること。PP1での目標が全て明確になった。最後の一人にたどり着いた地点がPP2。

DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「ヨンスは家族なんていらないという」最後の一人の泣き虫幽霊が誘いたい人がいると病院に行くとそこにはヨンス。ヨンスの父に会い、ヨンスが結婚するが相手は君かと聞かれる主人公。ヨンスは怒り、父の過去(語らない)と家族というものの良い幻想を罵倒し自分は家族なんていらないと去っていく。ショックを受けたサンマンは、家のほとんどのものをフリマに出してしまい、家は空っぽになる。

BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「幽霊達に帰れという」サンマンの家にヨンスの父(の幽霊)がやってくる。入院していたヨンスの父はこの時点ですでに亡くなっており、遺言をヨンスに伝えようとするサンマン。父の葬式手で手にしたカメラをサンマンに渡しに来たヨンスを誘い、幽霊たちとヨンスとご飯を食べるサンマン。ここで最後の一人、泣き虫幽霊の夢も叶う。ヨンスにヨンスの父のメッセージを伝えるが、死に毎日直面している看護婦であるヨンスにとって死者のメッセージは辛いと帰ってしまう。サンマンは幽霊達にも帰れという。幽霊のいなくなった部屋で一人、また自殺を考え始めるサンマン。彼の孤独への回帰点はダークナイトオブザソウルにもとれるが、ラストのどんでん返しのスタート地点TPととる。

Twist「ツイスト」:「ヨンスとの時間」ヨンスはサンマンの教えてくれた場所で父からの贈り物を見つけ涙する。サンマンはお弁当を持って、ヨンスに会いに行き、二人で海苔巻きを食べる。その中の「セリ」の話から、サンマンは自分と一緒にいた泣き虫幽霊が母だったと気づく。

Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「幽霊達の正体を知る」サンマンは共に暮らした4人の幽霊が亡くなった自分の家族だったとわかり、誰もいなくなった部屋で呼びかける。すると、そこにまた幽霊達が出てきて、家族として幽霊達と話をするサンマン。家族写真を撮る。

Epilog「エピローグ」:「冒頭シーンの裏側」ストーリー冒頭の自殺をしようとしていたシーンに戻る。その周りに実は家族の幽霊達がいて、自殺をやめさせようとしていた裏側が明かされる。人は決して一人ではないというメッセージが見えるシーン。

Image2「ファイナルイメージ」:「サンマンの新しい家族」 EDでヨンスと結婚し、子供が生まれる。子供はサンマン一人しか写っていない写真を見て、他の人は誰という?サンマンの孤独な状態の変化。家族と愛を子供へと繋いでいく。

【作品コンセプトや魅力】

作品コンセプトは、家族と愛。自殺願望のある主人公というハードな設定をコメディタッチの展開と、ラストの真相を見せるシーンで暗すぎない展開にしている。また、作品後半のどんでん返しのための仕掛けとして、脇役の幽霊達に明確な名前をつけていない。魅力は主人公のどこか共感してしまうキャラクターと明快かつコメディカルな展開で飽きさせないこと。ラストの真相のわかる部分の展開と人は一人ではないというメッセージ。

【問題点と改善案】

中盤の小僧とタバコの男の願いを叶えるあたりで少しストーリーが中弛みするところ。ただ、ヨンスとの距離を詰めるというミッションがこの中に入っているので不要とまでは言えない。ヨンスのキャラが他のメンツに比べると弱い。家族の幽霊達が消えた後、また自殺をしようとしてやめたと思われるシーンは不要ではないか。

【感想】

「好き」4「作品」4「脚本」4
冒頭から自殺しようとしている主人公のこれからが気になる展開と後半の実は家族に見守られていたというどんでん返し部分がうまい。孤独で不幸な独り者の話かと思いきや、家族愛に溢れており、人は決して孤独はないというメッセージ性も感じる。また、暗い部分もコメディカルな調子で観客を堕としすぎない。幽霊達のキャラも強く楽しい。
メインプロットはミッション解決ストーリーだが、サブプロットとしてカンサンとヨンスの恋愛がある。メインプロットにサブが巧みに配置されており、ヒロイン・ヨンスの単独行動シーンが少ない。ヨンスはカンサンと対比する人物として描かれているが、自分にとってヨンスがもう少し魅力的だったら好きが+1あがったかもしれない。

(月三、2023/1/8)

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