初心者の方はこちらからどうぞ→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」
前回まで考えてきたログラインはストーリーの全体像を一言でまとめたようなものでした。
そのストーリーをどう展開していくかを考えるのがプロットです。構成ともいいます。
ハリウッドでは三幕構成といって、物語を三つのパートに分けて構成していきます。日本で一般的な起承転結や序破急より、ハリウッドの三幕構成の方が、定義がはっきりしているため、こちらをベースにして、後に他との比較で考えていくようにします。(日本の構成については別の回を設けます→補足「三幕構成・起承転結・序破急」)
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を例にします。
まずはログラインの復習。
「①歴史を変えたいという思いを抱えたロックを愛する高校生マーティ・マクフライは、②デロリアンに乗って30年前にタイムスリップし、自分が消えないよう両親の恋をとりもち、③未来に戻ってくる。」
これは116分の映画です。では「デロリアンに乗ってタイムスリップ」シーンは開始から何分にあるでしょう?
答えは31分です。
これが何を意味するかというと映画全体の時間の1/4のところだということです。
②タイムスリップは、主人公にとっての「旅」「ミッション」だとログラインで考えました。「デロリアンでタイムスリップ」するシーンは旅の始まりを意味します。
こういったシーンのことをプロットポイントと呼びます。
もし、このプロットポイント(=タイムスリップ)が映画の後半90分ぐらいのところで起きていたらどんなストーリーになるでしょう? 想像してみてください。
おそらく、それまでの90分間ではマーティの学園生活などが語られることになり、まったく別の映画になるでしょう。
あるいは映画開始5分で起きていたらどうでしょう?
勢いが出て、TVやCMのように瞬時に観客の心をキャッチしたいプロデューサーなどが好みそうです。しかし、実際の映画で前半30分でタイムスリップする前に出てきた主人公の家族、ドク、バフといったユニークのキャラを十分に見せられないまま過去へ飛んでしまうので、時代によるギャップが弱くなってしまいます。フリが弱いせいでオチも弱くなる、タメが足りないといったイメージです。
もちろん正解はありません。
優秀な脚本家であればタイムスリップのタイミングが遅かろうが早かろうが面白い物語を作り上げることができます。必ずタイムスリップに代わる別のプロットポイントを入れるはずです。
プロデューサーの無茶な要望に答えつつ面白い脚本に仕上げるのがプロの仕事です。
また、プロットこそすべてだという主義の人がいて(日本はむしろ情念主義でプロットを軽視しすぎてる気がしますが)、分析理論上はよくできた映画でも、面白いかどうか、ましてやヒットするかどうかは別問題です。
料理でいえば物語そのものは食材、それを素材に合わせてどう調理するかが技術です。
とくに重要なのはプロットポイントの位置によって、物語やテーマをコントロールできるということです。
素人の方で、「これは○○がテーマの話なんです!」と自分の作品を力説するが観客には伝わっていなことがよくありますがプロットポイントの位置がズレていることが多いようです。
プロットポイントを扱うことは、自分の伝えたいことを観客に伝えるためのテクニックの一つなのです。
★まとめ:
・「旅」「ミッション」「非日常」の始まりをプロットポイントと呼ぶ。
・プロットポイントのタイミングでテーマをコントロールする。
※『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の分析シートを公開しておきます。
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イルカとウマの音声解説はこちら
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初心者向けQ&A「そもそも三幕構成って何?」
「プロットを考える」シリーズ、次の解説→「小説でのプロットポイント」へ
「ログラインを考える」シリーズ、最初の解説→「フックのある企画から」へ
緋片イルカ2019/04/27追記
三幕構成のビート分析実例はこちら→がっつり分析シリーズ
文章表現についてはこちら→文章添削1「短文化」
文学(テーマ)についてはこちら→文学を考える1【文学とエンタメの違い】
キャラクター論についてはこちら→キャラクター概論1「キャラクターの構成要素」