ドラマ『ブラック・ミラー』シーズン3(三幕構成分析#100)

分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

上級編の内容を含みますが解説はしません。
作品情報はWikipediaより。

【ビートシート】

“ランク社会” “Nosedive”

監督:ジョー・ライト
原案:Charlie Brooker
脚本:ラシダ・ジョーンズ、Mike Schur
公開:2016年10月21日
キャスト: ブライス・ダラス・ハワード、アリス・イヴ、チェリー・ジョーンズ、ジェームズ・ノートン、アラン・リッチソン

「好き」4点 「作品」5点 「脚本」4点

●スリーポインツ
「カタリスト」:「セレブ友達からスピーチを頼まれる」(20分32%)
PP1:「結婚パーティー出発」(25分41%)
MP:「ヒッチハイク誰も止まらない」(37分60%)
フォール:「スーザン★1.4の車に乗る」(38分62%)
PP2:「パーティー到着」(50分81%)
引っ越しのため★4.5以上を目指すというのは、カタリストに見えなくもないが、全体のバランスから「主人公のセットアップ」の一部とした。演出上、結婚パーティーへの出発~到着がロードムービー的なアクト2になっている。★の落下が始まるのもわかりやすい。

●ヴォルテクス(RP2-DU型)
MP手前のバトル:★4.5を目指そうという決心~スピーチを頼まれる。
MP:スピーチの準備完成。
フォール:弟とのケンカ。パーティーへ出発=★落下開始
サブ2:スーザンとの出会い
PP2~DN:留置場に入る
BB:向かいの房の男との出会い
スタートの時点でそこそこ★の高い位置にいる。4.5を目指して上っていくが、弟のケンカ以降、パーティーへ出発して落下が開始する。オールイズロストらしいPP2まで落ちきって、新しい出会い(アクト3)の予感で終わる。

“拡張現実ゲーム” “Playtest”

監督:ダン・トラクテンバーグ
脚本:Charlie Brooker
公開:2016年10月21日
キャスト: ワイアット・ラッセル、ハナ・ジョン=カーメン、ウンミ・モサク、山村憲之介

「好き」4点 「作品」3点 「脚本」3点

●スリーポインツ
「カタリスト」:「残高不足で帰れない」(11分20%)
PP1:「実験開始」(19分34%)
MP:「余裕」(30分54%)
フォール:「恐怖体験開始」(31分56%)
PP2:「やめると宣言」(45分%81)

●ヴォルテクス(RP1-D型)
PP1:ゲーム会社の実験
ビート上はたくさんのツイストが入っているが、物語の本質はゲーム会社の実験で死んだというだけ。

“秘密” “Shut Up and Dance”

監督:ジェームズ・ワトキンス
脚本:Charlie Brooker、William Bridges
公開:2016年10月21日
キャスト: アレックス・ロウザー、ジェローム・フリン

「好き」3点 「作品」3点 「脚本」2点

●スリーポインツ
「カタリスト」:「脅迫メールが来る」(8分16%)
PP1:「指示に従う(バイト放棄)」(13分25%)
MP:「帰ってもいい?NO」(21分42%)
フォール:「二人行動開始」(24分47%)
PP2:「銀行前。拳銃」(34分62%)
指示に従って以降は、指示のハードルが上がっているだけ。演出上のメリハリとして、二人行動開始をフォール。拳銃発見後の葛藤はダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル的だが「動画流出」と「銀行強盗」を天秤にかけると、後者を選ぶのは異常ともいえるので、主人公を追い詰める動きが必要がため。男と別れて、一人で最後の決闘がビッグバトル。

●ヴォルテクス(RP1-D型)
カタリスト:ソフトダウンロード
PP1:脅迫メール
以降は、どんどんと悪い方向へ落ちていくだけの流れ。救い(フォール)もない。

“サン・ジュニペロ” “San Junipero”

監督:Owen Harris
脚本:Charlie Brooker
公開:2016年10月21日
キャスト: ググ・バサ=ロー、マッケンジー・デイヴィス

「好き」5点 「作品」5点 「脚本」5点

●スリーポインツ
「カタリスト」:「ケリーと出逢う」(4分7%)
PP1:「ケリーの車に乗る」(18分30%)
MP:「屋上でキス」(34分55%)
フォール:「現実での場所を教え合う」(37分63%)
PP2:「ヨーキーが脱出(死)」(47分79%)

●ヴォルテクス(RP3-UDU型)
スリーポインツと一致。60分がミニマムな三幕構成になっている。PP1の遅れ以外は理想的。カタリスト4分7%までは問題なかったのでディベートの処理を失敗している。設定と展開はとても良いが、やはりCharlie Brookerは感情描写(セリフ)が説明的でクリシェ。もったいない。アクト3以降、視点がヨーキーからケリーに変わっているが、60分だからか全く気にならない。シリーズの中で良作。

“虫けら掃討作戦” “Men Against Fire”

監督:Jakob Verbruggen
脚本:Charlie Brooker
公開:2016年10月21日
キャスト: マラカイ・カービー、マデリーン・ブルーワー、アリアーヌ・ラベド、サラ・スヌーク、マイケル・ケリー

「好き」3点 「作品」3点 「脚本」2点

●スリーポインツ
「カタリスト」:「光りを浴びる」(11分19%)
PP1:「マスシステムに異常開始」(18分31%)
MP:「虫けらを守る」(36分62%)
フォール:「虫けらをつれて逃げる」(37分63%)
PP2:「確保される」(46分78%)

●ヴォルテクス(RP2-UD型)
主人公の成長物語ではなくサスペンス・ミステリー型なので、システムに異常開始をPP1と捉えてよいか。その原因がわかる=真実を知るをMPとして、カウンセラーとの会話をフォール。兵士に戻るか、刑務所へ行くかの選択肢を迫られてPP2。演出がやや曖昧だが、兵士を選んだと思われるラストシーンはヴォルテクスとしてはDNで終わるバッドエンド。

“殺意の追跡” “Hated in the Nation”

監督:James Hawes
脚本:Charlie Brooker
公開:2016年10月21日
キャスト: ケリー・マクドナルド、フェイ・マーセイ(英語版)、ベネディクト・ウォン

「好き」4点 「作品」3点 「脚本」2点

●スリーポインツ
「カタリスト」:「事件発生」(7分8%)
PP1:「2日目。捜査開始」(14分16%)
MP:「目の前で殺される」(54分62%)
フォール:「捜査継続」(56分38%)
PP2:「犯人の名前がわかる」(65分75%)
89分あるため映画的な構成が必要だが、60分ドラマが間延びした構成にしかなっていなくて盛りあがりにかける。60分に収めていればもっとテンポがよかったはず。演出や「人工蜂」をつかった設定はとてもよいが、ミステリープロットとして処理しきれていない。『鳥』を思わせる描写も悪くはないのだが、人工蜂は刺すわけでもなく、耳や目から入るなら防護服とかフルフェイスヘルメットでも防げるのではないかという甘さを感じる。小屋に避難させるより直接的ではないか? PP2は良いとしてもアクト3の犯人のトラップも、刑事側のミス(押してしまう)ことで、ビッグバトルとしての緊張感に欠ける。いろいろと処理がチープ。邦題は『殺人の追憶』とショットの類似を感じたか? 女性バディ刑事も役者の演技以上の、ストーリー上の魅力に欠ける。とってつけたよう。

●ヴォルテクス(RP3-UDU型)
ミステリーとしての非日常は「人工蜂が凶器」とわかるところから始まると言えそう。スリーポインツもここでとっても良いが、全体から見ると捜査の過程。犯人の名前がわかるMP、犯人の捜索開始するフォール、敗北して逃がしてしまうPP2、女刑事のバディが追いかけていてアクト3に入る予感で終わる。60分の構成ならともかく、89分=映画と考えたらクライマックスにあたるビッグバトルがないようなもの。シャレたつもりで失敗するパターン。

緋片イルカ 2022.12.13

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