キャラクター概論12「言動決定要素②価値観:WANTと価値観のちがい」

前回は主人公のWANTとNEEDのちがいについて考えました。今回から改めて、6つにわけた言動決定要素の「価値観」について考えていきます。

【価値観の設定をWANT化する】
これまで価値観という言葉を当り前のようにつかってきましたが、改めて何をもって「価値観」とするかということを考えてみます。広辞苑をひくと以下のようにあります。

何に価値を認めるかという考え方。善悪・好悪などの価値を判断するとき、その判断の根幹をなす物事の見方。

これに従えば、例えば「人を助けることに価値をおく」「人が喜ぶことを好む」こういったものが価値観となります。
しかし、これは物語のキャラクターとしては設定でしかなく、以前にも考えたとおり、シーンで見せなければキャラクターの魅力にはなりません。

そのために価値観をWANTのような文章にすると扱いやすくなります(WANTについては前回の記事をご覧下さい)。

「人を助けることに価値をおく」→「人を助けたい」
「人が喜ぶことを好む」→「人を喜ばせたい」

これでキャラクターが動きやすくなります。

【価値観を具象化するとWANTになる】
「人を助けたい」では、まだプロットには乗せづらいです。

助けるために具体的に何をするのか?

ボランティアをするのか、家族のために働くのか、公園をつくるのか……
そういった具体的な行動が物語内でのWANTになります。

前回の記事に書いたようにWANTは階層があり、全体での目的と、シークエンスやシーンごとでの目的と同時に持つことがあります。
また「NEED」という、それまで無自覚だった「本当にしたいこと」を見つけたときには「価値観」そのものが変化することがあります。
ストーリータイプ「通過儀礼」のような成長物語であれば、価値観とNEEDは同一と言えます。

【変化しないキャラクターについて】
多くの物語創作セオリーで「主人公は変化するものである」といった言い方がなされていますが、これは思い込みです。
変化しないキャラクターについては過去の記事で書きましたが、フラットなキャラクターアークをもった主人公であれば、WANTと価値観がまったく関連しなくてもかまいません。

「人を助けたい」という価値観をもっているキャラクター。
ジャンルはサスペンス。
電車のホームである老人から、電話をかける間、荷物を持っていてくれないかと頼まれる主人公。

「人を助けたい」と思っている主人公であるから、ここで引き受けます。
この価値観を持っていないキャラクターであれば「そこのベンチに置いたらどうですか?」とか「急いでるんで」といって立ち去ってしまうかもしれません。

しかし、その荷物を預かったまま、老人は消えてしまう。交番へ持って行くと、そこにはとんでもないものが……

こういった展開では「人を助けたい」という価値観と、WANTには関連がありません。
価値観は、主人公のリアクションとして作用しているだけです。
この基本性質は、変わらないので、別のシーンでも、この主人公は「人を助ける」行動を基本的にとることになります。
物語の「WANT」は老人を探すといったストーリー上の具体的なものになります。

これがWANTと価値観のちがいになります。
ミステリー、サスペンス、アクションの主人公は変化しないキャラクターも多いのでWANT=価値観ではないことは区別しておきました。

次回は……キャラクター概論13「言動決定要素②価値観:ペルソナについて」

キャラクター論のすべてのリストはこちら

緋片イルカ 2019/07/18

構成について初心者の方はこちら→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」

三幕構成の本についてはこちら→三幕構成の本を紹介(基本編)

文学(テーマ)についてはこちら→文学を考える1【文学とエンタメの違い】

文章表現についてはこちら→文章添削1「短文化」

物語論すべてのリストはこちら

「三幕構成について語ろう」という掲示板もありますので、ご自由にご参加ください。

SNSシェア

フォローする